工房敷地内は危険区域だらけ
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その動き、まるで生きているかのよう
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「一本一本心をこめてよりあげました 公子」
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やる前に天日に干します
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我が子を慈しむかのように
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人の紹介には、共感が要る。
どうもその共感の先は、ボーっとしていると相容れないように思えるソレとコレを平気で同居させて生きている人にばかり、向かう。斉藤公子さんもソウイウ方だ。彼女は花火師である。
斉藤さんは数年前、線香花火の傑作を生み出した。名を、‘ひかり撫子’という。なんとも艶やかな名前であろう。
‘ひかり撫子’は、一本ずつ手でよって作られる。出来上がった花火の命は短い。ものの数十秒の中に起承転結を映し出して、その生涯を終える。時に長い導 入の後突然盛りを迎える一本もあれば、納得のいく結果を待たずして終わる一本もある。ソウイウモノだと思えば、これほど楽しめる花火もない。
ひかり撫子の作者は、デリケートのかたまりで、照れ屋である。ボーっとしているとただの気さくなおばさんにしか見えないところが、にくい。
工房には何度かお邪魔しているが、艶やかにもてなされたことは一度もない。先日は二人でカップラーメンをすすった。そのもてなしがサマになる。まるで万事わきまえた茶人のように。
夏の夜のロマンチックを演出するのが線香花火ならば、ロマンチックなんて蹴飛ばしてしまえるのがまた、斉藤さんでもある。
「この世をば どりゃおいとまに 線香の 煙りと共に はいさようなら(十返舎一九)」
コウイウノも、きっと好きなはずだ。
(文: 堀澤 宏之) |