日刊鶴のひとこえ

この鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。現在の担当者は堀澤、岡安、すーさん、抜井です。この4人が月替わりで担当しています。令和3年度は、4月(す)5月(堀)6月(抜)7月(岡)8月(す)9月(堀)10月(抜)11月(岡)12月(す)1月(堀)2月(抜)3月(岡)の順です。

4730声 未帰還

2021年03月31日

いつもマメに投稿せずに月の最後にバーッと思ったことを書くことが続いた「めっかった群馬」。今月も最後の10日はやはりそうなったが、今月はわりとマメに書いてみた。今月はまさに「1日1つずつ仕事を終えていく」気持ちだった。それも「そこまで溜めてしまった」僕のだめさの反映だし、そんな状態であっても仕事が続いているのは、周りのみなさんの協力あってのものだと思っている。感謝。

 

僕は今月をサバイブできたのだろうか。まだあちら側から帰って来た気がしない(そういえば、今月一度も酒を飲んでいない)。あと1年は、自虐的なようでもあるこのようなガムシャラな日々が続くと思っている。でもその先は・・

 

昨日、前橋文学館の萩原朔太郎像の前で、子ども2人にカメラを向けるお母さんがいた。朔太郎のポーズをまねて子どもたちが顎に手を添える。撮影の掛け声は

 

「はい、さくたろー」

 

なにそれ可愛すぎ。4月は、桜を見ながらビールを飲むよ。

4729声 てんとう虫

2021年03月30日

時間の経過が早すぎて、まだ春を受け入れる心持がないのだけど、いつのまにか車内に入り込んだてんとう虫をみて、現実を諭された。

4728声 シナリオ集

2021年03月29日

僕が実行委員長をつとめる「伊参スタジオ映画祭」の20周年記念でもある、書籍「伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2003-2019」。つまりは「伊参スタジオ映画祭の過去の大賞受賞シナリオ34作品を1冊にまとめた、映画祭20周年を記念する、2001年宇宙の旅のモノリスみたいな堂々とした存在感があるシナリオ集」がついに完成した。

 

クラウドファンディングでご支援いただいた方にはもうお手元に届いており、4月以降にはamazonや群馬県内の書店でもご購入いただけるようになる。

 

B5版400ページ。いやぁ・・重いわこの本。いや重量だけじゃなくて重い思いが詰まった本となった。シナリオ34作品と各監督からのメッセージ以外にも、シナリオ大賞審査員である篠原哲雄監督、松岡周作プロデューサー、豊島圭介監督、シナリオセンターの坂井昌三さん、脚本家の龍居由佳里さん、そして2年間審査員をつとめていただいた作家の横山秀夫さんの挨拶を掲載。1日1作品ずつ読んでも1ヶ月読めるという、映画関係者・志望者必読の1冊となった。

 

取材をしてくれた方にこの本の魅力などを話つつ、「考えてみれば俺まだじっくりこの本読んでない」と気づく。いかんな。来月は、そういう時間も作っていかねば。この本は過去の集積であり、同時に「未来の映画を作るもの」でもあると思っている。もしどこかで見かけたなら、ぜひ手にとっていただきたい!本気で、よろしく!

4727声 白井屋ホテル

2021年03月28日

できればお客として泊まりたかった白井屋ホテルで仕事(入口で服装チェックがあれば入れもしないけど)。前橋の白井屋ホテルはご存じの方も多いであろう高級ホテル・・というかアートホテルである。建物正面にはローレンス・ ウィナーの(僕からすると)異国感を感じるサインが並び、改装されたホテル内にはレアンドロ・エルリッヒ(金沢の美術館のプールの作品の人)の配管のような発光管が張り巡らされている。

 

今日はその中での朗読劇の撮影だった。脚本は僕が早くも3作目の撮影となる加藤真史さん。物語では医者であった萩原朔太郎の父・密蔵の時代と、コロナ過における現代とが両方描かれている、医療従事者の物語。劇の開催(と同時に前橋のFMでも中継)はコロナ過で働く医療従事者へのエールの意味もあるとのこと。とても面白い劇だったが、場所として環境として、撮影は難しかった・・編集でどこまで芯に迫れるか。

 

白井屋ホテルは著名アーティストの作品の効果・・というよりはそういうものがあるホテル内での従業員さんたちの「ここは上質なホテルである」という気配り・雰囲気により、やはり特別な感じがした。であるがしかし、今の僕のニーズに合うのは、仕事ができてジュース飲み放題&カレー食べ放題の前橋ICそばのまんが喫茶だったりする。・・って、書いててものすごく寂しいぞ。

4726声 Factory Run Project

2021年03月27日

工場作業着を着た女が、前橋の道を走る。走る。走る。僕は道路の反対側でカメラをジンバルに乗せて並走する。マルハン前橋天川大島店を通過、ここは昔、鉄工所だったんだぜ。作業着を着た男が、利根川の河川敷を走る。走る。走る。僕は少し遠いところからカメラでパン撮影をする。一羽の鳥が画面を横切る。あの川の向こうのスーパーマーケットは昔、中島飛行機だったんだぜ。

 

という動画を、チームで制作した。アーツ前橋が行っている「アーティスト・イン・レジデンス活動支援事業」の一環だった。以前前橋市にも滞在制作した韓国のアーティスト、キム・ジェミニさんの「Factory Run Project」の前橋バージョンの撮影であった。リモートで撮影内容の指示が届く。実際、作品として映像に残るものは、工場作業着を着て走る人と、過去工場(的なもの)があった場所、その2つだけ。

 

一体どんな映像になるのかと、撮影している時は想像できなかったが、結果不思議な中毒性のある動画となった(近日中にアーツ前橋youtubeで公開)。なにより「前橋市街地には昔こんなに工場があったのか/今こんなことになってるのか」という驚きがあった。

 

ジェミニさんはもちろん来日ができず、僕も直接お話したことはない。だから彼がどうしてそのような映像作品を作るに至ったのかも、実は知らない。若干、「考えるな、感じろ」という側面もある気がしている。アーティストって、すごい。

4725声 HOME/TOWN

2021年03月26日

アーツ前橋と並び、「太田市美術館・図書館」でも開館当時から展示記録やイベント記録で関わらせていただいている。現在行われているのは、地元太田市出身の写真家、片山真理さんと吉江淳さん、そして故人である太田市の詩人・清水房之丞氏の3者による開館3周年記念展「HOME/TOWN」。たまらなくエッジの効いた展覧会だ。

 

地元の写真家と詩人か・・と、いわゆる「身近なもので済ませた」展示を想像してしまうのはもったいない。片山さんは海外での展示も多くて全国的に注目を集める写真家だし、吉江さんが映す太田とその近辺で撮影された写真は他に類をみない「言葉で言い表しにくい何か」に満ち満ちている(そのあたりは、今日編集を終え、近日公開となる吉江さん&この展覧会を担当した小金沢智さんの対談動画を見てほしい)そしてなにより、2人の写真の間に、稲や草のように生える(展示されている)房之丞の詩がたまらない。行ってほしいので最後に、僕が大好きなその詩の一節を置いておこう(どこに展示されているかは、ぜひ館内を探検してください)。

 

僕等の元気を発表しようか すばらしい活動だぜ(「村の七月」より)

4724声 OPA

2021年03月25日

大学生はきらきらしている。そのきらきら感は小中学生や高校生のそれとは違う。個人的には、大学生というのは学生と社会人の間、実際将来を見据える時期であり、昔も今もその多くは「きらきらなんかじゃないっつーの、今の社会に希望持てるわけないじゃん」と内心思っているのかもしれないが、僕が撮影した大学生、それは共愛学園前橋国際大学の学生たちではあるが、彼女らは内実ともにきらきらしていた。

 

一昨年くらいから、広告代理店を通じてこの大学のPVやコース動画を担当している。そして今回は「高崎OPAで流すCM」の依頼であった。さて、どうしよう。結果、「学生の主体性を重んじる大学なのだから、学生がiphoneをもって自らを映す」という提案をしてそれが通った。それだけだと似たものもあるので、彼らが発する声についてもひとアイデア。まあそれら自体はたいした撮影法ではないかもしれないが、実際撮影に応じてくれた学生たちのきらきらにより、真っすぐにきらきらしたCMになった気がする。

 

高崎の駅前の一等地で「いつ流れるの」と待ち続ける勇気はないが、一度は現地で見てみたいと思っている。がんばれ、大学生!

4723声 文学館

2021年03月24日

萩原朔太郎はもちろん、詩とは縁遠い人生を送ってきた。が、きっかけというのはいつも突然で、昨年より「前橋文学館」の映像記録を担当することとなった。

 

文学館の展示は、朔太郎を中心とした常設以外に、つねにだいたい2つ、詩や前橋、館長であり朔太郎の孫でもある萩原朔美さん関連の展示が行われている。僕が展示を撮影したものでは、詩人であり作詞も手掛けた佐藤惣之助氏、寺山修司の天井桟敷に在籍しTBSや自主でも映像制作を行う安藤紘平氏、不思議の国のアリスの書籍イラスト等で多くのファンと長いキャリアをもつ田村セツコさん、そして朔太郎の娘であり朔美さんの母でもある小説家の萩原葉子さんがあり、その人らも今までの僕なら接点はなかったと思うが、どの方の展示もとても興味深かった。

 

文学館の展示は、美術館などと違って、いい意味での手作り感がある。それは担当職員の方が対象となる人物を掘り下げつつ、限られた予算の中で外注ではなく主に自分たちで多くの展示物を作ってしまうからだ。であるから映像も、あえて統一感を出さずに各展示ごとに、説明を聞いて僕が見た印象で撮り方・つなげ方を変えている。なかなか大変ではあるが、そうやって「1つの解釈」を提示することは面白い(そしてその解釈は独りよがりじゃくて今のところ好評・・なはず)。

 

この月末に仕上げたものでは「なぜ踊らないの-生誕100年記念 萩原葉子展」の展示が印象深かった。そこには、有名な朔太郎の娘として生まれた葛藤、小説家の歩み、そして40歳を過ぎてから盛んに行ったというダンス等のトピックのほかに、「朔美さん(息子)からの母親への思い」があふれる展示がいくつも飾られていた。それはたんなる「母思い」のいい話ではなくて、あるものはごうごうと音がするような情念のようなものが溢れ出ていた(個人的感想)。

 

それがまるっと映像で残せたとは思えないが、小指の先のつめくらいは残せたかもしれない(のちに文学館youtubeで視聴できるかと)。とかく、仕事によって知った「前橋文学館」は、今は僕のおすすめスポットとなった。今行われているマーサ・ナカムラさんの展示もとても良いよ。

4722声 精密管

2021年03月23日

精密管って知ってますか?僕は知らなかった。映像の仕事の幅も広がってきて、直接僕に依頼がある話ではなくて、広告代理店が行う映像制作を担うこともある。「岡安さん、精密管を作っている会社のPVです!」と言われても、最初理解ができなかった。簡単にいうと、ステンレス等の金属でできた鋼管(くだ)である。精密管というくらいだからその精度はピカイチで、管の中面が鏡のような鏡面仕上げのものもある。その管の中には液体や光ファイバーなどが通り、のどかな高崎市吉井町で作られているその鋼管は、なんと宇宙ロケットや原子力発電所にも使われているのだそうだ。

 

仕事を引き受ける際は「僕にやれるのか」ということは自問する。まあしかし一度行かなければ何もわかるまいと、担当者とともに工場を訪れた。熱処理からの水冷却でもくもくと上がる煙、リズムよく動く機械・・僕の中の「超おちこぼれだったけど一応機械工学科卒」の血が騒ぐ。結果、最近よく組むビデオグラファーの大嶋くんの撮影協力・編集のおかげで映像がやっとこさ完成した(また、今回は英語翻訳の必要があったので、バリバリ英語ができる知人お二人に協力いただいた。最近はこのようにチームで作る仕事の醍醐味もわかってきた)。

 

さて、みなさんはなかなか必要としない業種かもしれないがご紹介しておこう。精密管を買うならここだ!

4721声 巨大な機織り機

2021年03月22日

うちの隣にあるアパートには、西岳拡貴というアーティストが住んでいる。アーティスト・・ガチでそれをしている友人知人も多くなったので、こんなこと言っちゃいけないのだが、なんだかうさんくささも感じる呼び方である。自称アーティストという言葉は、いい意味で使われているのを見たことがない。・・が、そんなことはさておいて、西岳くんは、根っからのアーティストだと思う。

 

アートに関心がない方にも理解しやすいことだと、彼は「nakanojo craft project」を立ち上げ、仲間とともに「クラフトチョコレート」(カカオ豆の焙煎からはじめて、テンパリングと呼ばれる技術で練り上げて成形・凝ったパッケージ化までする)を作っている。そのチョコは中之条ガーデンズやつむじやスーパーまるおかで大人気。バレンタイン時はネットでの販売が売り切れになった。そして実際に、このチョコレートはワインやウイスキーが欲しくなる大人なチョコであり、とてもおいしい。

 

その一方では、それこそ中之条ガーデンズの什器を作ったり、そもそも中之条町に来るきっかけになった地域おこし協力隊としての中之条ビエンナーレの運営サポートで海外作家のアートをインストール(設置)したり。憎いくらいに(何の嫉妬?)なんでもやれる。

 

彼は今年度、前橋のアーツ前橋でも「あーつひろば」と名付けられたサポータープログラムを担当した。その成果物(実際は途中経過)は現在、アーツ前橋1階に展示されており、展示の補助になるための映像を僕が担当した。彼が行ったことは「アーツ前橋のサポーター(応援者)が持ち寄った様々なものを、1つの織物にする」こと。そのための、巨大な機織り機を、彼は独学で作ってしまった(そんな雑な説明で意味が通じるだろうか)。

 

アーツ前橋で起きた作品の紛失はニュースにもなってしまったが、展覧会がないこれからの期間、その「機織りワークス」は建物の外からでもご覧いただくことができるので、近くに言った際にはぜひ見ていただきたい。

4720声 ジュピター

2021年03月21日

「仕事は忙しい奴にやらせろ」という話を聞いたことがある。詳しくは忘れたが、忙しく動いているやつはより早く仕事を済ませるからだったような気はした。上司から部下にそれをやれば今時代的にはパワハラである。

 

がしかし、過去一忙しい(毎年言ってる気が)タイミングを見計らったかのように色々仕事のお声がけをいただく。内容によってはさすがにお断りすることもあるが、極力僕以外の誰かに回せないかとか、そのくらいならやれるかなとか考えたりはする。

 

たとえば、会社そばにある「カラオケジュピター」から、「看板を新しくするんすけど、デザインしてくだい」とLINEが届いた。そういうのは得意じゃないし、きちんとやるなら手順もあれこれある案件だが「やれる範囲で良い」とのことなので来た球をコーンと一度打ち返した。それが即採用、地元の優秀な看板屋塗装屋によってあっというまに看板になったという。

 

「全室24時間換気システム導入」それが、店名や営業時間のほかに入れてほしいという一言だった。ジュピターの大ちゃんは、カラオケ店を開けながらも道の駅八ッ場でハンバーガーを販売したりしてがんばっており、カラオケ自体もまだあきらめていない。今引き受けたのは、ちょっとでもその手助けになれたらという気持ちもあった。

 

今日、新聞代配(母体が新聞販売店)を終えてバイクそのままでつーっと見に行ったら、悪くない看板だった。そういえば、最後にカラオケに行ったのはいつだろう?

4719声 マスクをつけない子どもたち

2021年03月20日

アーツ前橋の「アート・イン・スクール」事業(前橋市の学校にアーティストが出向き何かしらを行う試み)ももう何年目だろうか。コロナ過の今、今年度は中止かなぁと思っていたが、前橋市立宮城小学校が好意的に受け入れてくださって、マスク等の対策をしながらアーティストたちと共に何度か足を運んだ。その報告としては、近々アーツ前橋から印刷物が出て、僕が担当させていただいた動画もそこから見ることができる。

 

で、その本動画とは別に、「関わった6年生の卒業式で何かをしよう」という話になった。アーティスト・中島佑太の発案により「今年は子どもたち同士もマスクの顔しか見ていないのではないか。マスクをとって口を見せて何かする動画を作ろう」という流れになり、結果学校の校歌を歌う子どもたちを2台のiphoneで撮影、編集して卒業式で流していただいた。

 

卒業式のあと、先生からは「見せることが出来ました!保護者は母校の校歌だからか子ども達のマスクなしの画像に感激したのか目頭を押さえている方が目立ちました。」というコメントが届いた。マスクをせずに、ただ校歌を歌う動画が心を打つ状況っていうのは普通じゃないが、それが普通になった今、そんな時間を作れたということがとても嬉しかった。

4718声 スイートフェンネル

2021年03月19日

アーツ前橋で3/21(日)まで開催されている「聴くー共鳴する世界」の展示撮影であった。とても良いと評判を聞いていたのでプライベートでも行きたいと思っていたが、展示撮影が初対面となってしまった。

 

アート分野ではなく、ドキュメンタリー界隈でも話題になった小森はるかさん、瀬尾夏美さんによる東日本大震災に関する人々の声の映像作品や、台湾におけるある人々の人生を環境音によって浮き彫りにするワン・ホンカイさんの作品など。まさに見応え・・聞き応えのある展示だった。

 

以前アーツで滞在制作をしたというスン・テウさんの作品は、前橋で暮らすベトナム人のタオ・ホアンさんの歌がアーツや市内各所で16時に流れるという作品。県庁そばのアジア食材店で16時に流れるその歌も撮影した。日本で暮らす心境を歌ったというその歌は日本語もまじっていて、どこか懐かしいメロディ、とても良い歌だった。食材店自体も僕にとってはとても新鮮で、インドカレー店のレジなどにおいてあるスイートフェンネルの大袋を買って帰った。

 

もうあと数日の開催だが「聴くー共鳴する世界」おすすめです。また、アーツ前橋では多文化共生に関する「イミグラジオ」というネットラジオを配信していて、その初回ではスン・テウさんの作品であるホアンさんが歌う曲も聞くことができる。ぜひ耳をすませていただきたい。

イミグラジオ

4717声 おはぎ

2021年03月18日

この調子だといつ墓参りに行けるかわからないので平日ながら母と姉を連れて父の墓参り。たった3人ではあるが家族そろっての外出は買い物以外は墓参りくらいなので、毎回印象に残る。そして「また墓参りか」と思ってしまう心持ちなので(実際は盆と彼岸しか行かない)日頃いかに日々を大切にしていないかを実感することとなる。

 

今年はさっそく、手を合わせながら(先日ここに書いた)庭について何もしていないことを父に詫びた。だからといって、これを境に僕が庭木の手入れをする姿は想像することができない。相変わらず、親不孝は続く。

 

帰りに車で母が「賢一は忙しいから、おはぎ食べてから仕事行けば」と言った。すかさず姉が「お父さんに備えてからでしょ。甘いもの好きだったよね」と返した。そう、父はまんじゅうやおはぎなどが大好きで(そこはあまり似なかった)よく食べていた。明日、ちょっと固くなったおはぎを食べることとしよう。

4716声 庭の木

2021年03月17日

仕事に追われている風な生活をし続けているので、家のことは母親と姉に任せっぱなしが続いている。近年は会社に泊まることも多く、家には朝飯と、風呂と寝に帰るだけ。土日に1日家にいたのは正月くらいではないだろうか。

 

庭の手入れは生前父の趣味であり仕事だった。その父も亡くなって10年以上が過ぎ、その手入れを継いできたのは母である。力仕事も含まれるので本来なら僕がやることなのだが、家にいないことで無言で母に押し付けている。

 

高く太く伸びた木がある。さすがに母には切れないし、僕にも切れない。このまま伸びて倒れでもして、隣の家を壊してはいけないと母はずっと不安を言っていた。ので、重い腰を上げて、知り合いの木こりに切ってもらうように連絡をつけた。

 

その際、母から「うちには何本の木があるか知ってる?」と聞かれた。庭付き一軒家といってもそれほど広くない。大小合わせて7〜8本だと思っていた。その正解として、母は手書きのメモを僕に渡した。

 

葉先が赤くなる木
バラの木
赤い実がなる木
さんしょの木
バラの木
白つつじの木
白もくれんの木
八重桜の木
つつじの木
やまぶきの木
赤いつばきの木
もも色つつじの木
巨木の木
もみじの木
(読めない)の木
もみじの木
きんもくせいの木
高い木
さらの木
さらの木
なんてんの木
さざんかの木
ぐみの木
つつじの木
しゃくやくの木
おにつつじの木
まつの木
つつじの木
ぼけの木
まつの木
もみじの木
西洋しゃくなげの木
さるすべりの木
うめの木
ゆきやなぎの木
(以下、母が自分で切った木)
きんもくせいの木
まつの木
まつの木
西洋しゃくなげの木
うめの木

 

驚くべきことに、そこには切った木合わせて40本の木の名前があった。全く知らなかったし知ろうともしなかった。それは、父が本当に好きで植えたり手入れしたりしてきた記録であり、父なきあとに母ができるかぎりの手入れをしてきた記録であった。

4715声 クレモモ

2021年03月16日

桃の一種ではない。昨年かそれよりちょっと前に中之条町に移住してきたアーティストの名前である。カナダ出身の男性・クレムさんと、たしか群馬出身のモモさん。男女によるアートユニット・クレモモ。

 

クレモモの魅力は「発想力」と「キュートさ(これは他にも言い方があると思うけどしっくりくるのはこれ)」。アーツ前橋のプロジェクトで小学校へ行ったときは、「編んで作品を作る」という美術教材を使って、筆やパラシュートを作っていた。パラシュート?編んだ籠に生卵を入れて、風受けもつけて、実際に校長先生にも断りを入れて、後者の三階から落とした。卵は割れなかった。また、中之条町つむじではクレモモ作の欠けた陶器を使ったイヤリングなども販売している。彼らにとっては全てのマテリアルは画材であり素材なのだ。

 

今日は、以前行った「旅ルミネ」というリモート旅に続き、彼らの活動の中継を担当した。地元でとれた杉の粉や粘土を使って、終始楽しい雰囲気で日常で使えるもの・使えないものを作っていく。

 

時代や社会に対峙し命を削るように制作するアートがある一方で、彼らが(ももちろん一生懸命ではあるが)作る楽しさやゆるさや鋭さは、いつもななめの方向からやってくるものであり、とても良いなと思っている。そういえば、今ビエント高崎にある「ビエントアートギャラリー」にて3/29(月)までクレモモの個展が行われている(土日月の午後のみ営業)。ふらっと立ち寄ってその楽しさに触れてほしい。

4714声 地方のデザイン

2021年03月15日

映像仕事の一方で、地方ゆえのこととも思うのだが「デザイン」に関する仕事が絶えない。といっても僕はデザインを学んだわけではない。そもそもは、中之条町のつむじでテナントを借りて飲食営業をしている際に、あまりにも暇で(?)知り合いのイベントや店の案内を作っていたことからだんだん仕事っぽくなっていった。今では観光ポスターや飲食店のパンフ、がん検診のお知らせや各種のぼり旗まで。一応はなんでも対応できるようになってきた。

 

地方ゆえに、と書いたのは、そもそもデザイナー自体がこの地域では少ない。印刷所は町に数件ずつあるが、長年いてもそこにいる人のデザイン性や仕事の様子は伝わってこない。ので、「誰かできる人いない?」ということで僕に回ってくるということは実際あると思う。が、だからそれをしていきたいというわけではない。であれば、地方ゆえに、地方でしかできないとまでは言わないが、地方の理を生かしたデザイン、を作っているデザイナーに惹かれるし、自分の仕事もそれに近づけていきたい。

 

今は、お隣高山村の「登山マップ」を作っている。過去別の人によって作られた登山マップを持って、できれば子持山、小野子山、中ノ岳、十二ヶ岳すべてを登り、それから作成をしたかったのだが(実際、仕事を引き受けたのはうんと前なのだが)結局はそのうち1つを登ったきりでの制作となってしまった。最前は尽くすがダメだなぁ。足を使わねば、地方のデザインは作れないのだから。

4713声 生きるように働く

2021年03月14日

今日は、東吾妻町に新しく店をはじめる人についていき、その場所を見て回った。ふとしたことで知り合って、新しい店の広告に関する協力をすることになった。あとで詳しく書くかもしれないが、料理キャリアも長いその女性が作る料理はものすごく美味しくて、体に負荷がない材料・作り方を徹底している。こういう人の料理は、マニュアルに沿ってアルバイトが作る料理とは真逆にあるような(そんな牛丼的なものも好きなので否定ではないが)心地よさがある。料理をすることが、息をすることと同じような、仕事でもあり、生活そのものでもあるような人。

 

なんてことを考えると、今年元旦のお気楽俳句ingで、このサイトの立ち上げ人である料理人の堀澤さんが、四万温泉で長年続く「一力鮨」で語った「この鮨がおいしいのは、大将が長年に渡って作り続けてきたからだよね。丁寧に何十年も作ってきたということが味に出ている」的な言葉を思い出す。思えば彼も、仕事でもあるが生活そのものでもあるような料理やビールを出す。

 

「この場所に惚れたの」というその店の予定地は、とても古いものが凛として集まっている不思議な場所だった。一歩外に出れば、岩櫃山から川原湯温泉に抜けるまでの、吾妻渓谷を挟んでの平地と奥の山々とが一望できる。彼女はまさに、生きるように働いている。僕はどうだろうか、生活における仕事の比重だけは重いが、大事なものが欠落している気もする。


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