日刊鶴のひとこえ

この負け犬の遠吠…ではなく、鶴のひとこえは、「めっかった群馬」に携わる面々が、日刊(を目指す気持ち)で記事を更新致します。現在の担当者は堀澤、岡安、すーさんと、わたくし抜井です。この4人が月替わりで担当しています。平成29年前半は、1月(堀)2月(抜)3月(岡)4月(す)5月(堀)6月(抜)7月(岡)8月(す)9月(掘)の順です。

3886声 魔窟めく

2017年06月28日

梅雨らしい天気が続いている。
こうなると、巷の不快指数も上昇の一途をたどり、
満員電車内や職場でも、苛々の気配が充満してくる。
今日も、帰りがけに机で聞きたい用事があり、
駅周辺の喫茶店を回ったが、雨模様のためか、
どこも満席であった。
 
手っ取り早く机と静かな空間にありつきたかったので、
喫茶店の脇のネットカフェに入ることにした。
都市部のネットカフェの多くがそうであるように、
席は狭小である。
PCのキーボードをモニターの横に立てかけねば、
用紙に文字を書くことが困難なほどである。
当然ながら、ネットカフェの店内は静かである。
時折、カップラーメンの匂いなどが隣席から漂ってくる
ときには辟易するが、それでも、静寂は快適である。
 
突然それを打ち砕いたのが、冒頭で述べた苛々の気配である。
通路を挟んだ後ろの席から、「チッ」という舌打ちに始まり、
「ドスッ」と机をたたく音、さらには「バキッ」とキーボードや、
おそらくPC本体をたたく音へと、席の中の気配はエスカレートしていく。
その都度、「ううっ」や「ああっ」など、中年男性と思しき、
苛立ちの声がもれている。
なんだか不気味に様相であったため、そそくさと退席し、
レジで利用料金を支払っていると、ずんずんずんという具合に、
こめかみにやや血管の浮き出た四十がらみの小柄な男性が、
こちらへ向かって来た。
レジのお兄さんが「ありがとうございました」と、
私におつりを渡すや否や、その血管浮き出し男は、「ダ」といった。
続けて、「ダ、ダ、ダウンロードデキナイ」と言い切り。
唖然とするレジのお兄さんを見据え、「ミ、テ、ク、レ」と、
絞りだすようにいった。
その後、二人は通路の奥の席へと消えて行った。
梅雨の暗さと相まって、振り返る店内の入り口が魔窟めいて見えた。

3885声 は?

2017年06月27日

著者校正のゲラが出てきた。
校正箇所の一箇所に印が付いていて、
「は?」と記載されていた。
「意味が分かりませんが」の「は」
だと内容を受け取り、文脈を見返した。
どうやら、この箇所には、
「はの一文字を追加ではないですか」
の意だということが分かり、ほっとした。
「は?」
という文字にこんなに威圧感があるとは。

3884声 箸袋の裏

2017年06月26日

よくヘマをやる。
今朝も、洗濯物を干そうと洗濯機から出したとたん、
ヘマをした事に気づいた。
黒いTシャツに紙くずがちりばめられているではないか。
これはYシャツの胸ポケットかどこかに、ティッシュを
入れっぱなしにしたまま、洗濯機を回した際にできる現象である。
ティッシュが水に溶け出し、粉々になって衣服に付着している。
この現象は、花粉症なので春先は頻繁に起こってしまうが、
今回は油断している梅雨の時期にも発生してしまった。
 
冬に多いのが、ポケットの紙くず現象である。
同じく、洗濯物を干して取り込んだ際、ズボンのポケットが、
紙くずだらけになっていることがある。
そのまま気づかずに干しているので、紙くずがカチカチに固まって、
除去するのが大変、というか取れない。
この現象も原因ははっきりしていて、箸袋なのである。
 
酒場などで、ちびりちびりと飲んでいて、ふと俳句だか忘れていたことだが、
思い出したとき、箸袋の裏にメモを取ることがある。
箸袋をそのままポケットに詰め込んで、深酒も相まって、
すっかり忘れてしまうのである。
運が良いと、箸袋の原型が少し残っていて、
切れ切れになった文字が読めることがある。
大方は、改めて読む必要もないことばかりだが。

3883声 歌声

2017年06月25日

梅雨らしい天気となって、蒸し暑い一日であった。
なんだか、耳の奥にまだ昨夜の歌声が残っている。
沢で蛍の出現を待っているとき、薄闇の中で、
子どもたちが「ほたるこい」を歌っていた。
 
「ほう ほう ほうたる こい」
 
なんだか水木しげるの世界を彷彿とさせる光景で
あるが、妙に落ち着く歌声であった。
私の住んでいるこの町では、
子どもたちの歌声を聴いたことが無い。
子どもたちの集まる光といえば、夜に煌々と灯っている、
学習塾の光くらいである。

3882声 里の闇

2017年06月24日

蛍狩りへでかけた。
ほたるのその時々の気候に左右されやすいので、
思い立ったときに、「えい」と気合を入れて、
出かけねばならない。
アクセルを踏みっぱなしにして、北上、さらに北上。
夕暮れまでに間に合った先は、群馬県高崎市倉渕町である。
図らずも、お目当ての沢には「ほたる祭り」との幟がたっており、
本日がその当日であった。
車を止めた公民館のような場所には、
筵の上に子どもたちが大勢座っていて、
紙芝居を真剣に観ていた。
奥の席にはその光景を眺めつつ、お茶を飲む市長が見えた。
そそそっと一足先に沢へ移動し、じっと蛍を待った。
ほどなくして、一匹、二匹と青い光が飛び始め、
紙芝居が終わったのか、あっという間に人も蛍も増えた。
気温が19度と低めであったためか、蛍の数は控えめであった。
しかし、「乱舞」というほどではないが、
しっかりとたくましい光を放っていた。
八時半を過ぎるころには、蛍の数に伴って人波もひき、
すぐにもとの里の闇となった。

3881声 カメラの前

2017年06月23日

午後、俳句の雑誌の撮影があった。
お気に入りの一冊の写真を撮るのだが、
野外での撮影であったため、非常に緊張した。
今月はじめに鼻の横に突如出現した出来物は、
ようやく沈静化したのだが、色素沈着というか、
そこの部分だけ濃い痣のようになってしまった。
間抜けな顔が、いっそう間抜けになっている。
そんな顔で、うすら笑いを浮かべながら、
カメラの前に立っていた。
 
撮影が終わり、しばし編集者の方と会話する時間があった。
普段、面と向かって際する機会がなかったので、新鮮であった。
単純だが、目標に向かって走らねばと思った。

3880声 結局

2017年06月22日

酒をおごってもらった人には、逆らえない。

3879声 戒め

2017年06月21日

車を所有している。
はじめて買った車で、もう十年程度乗っている。
走行距離は八万キロに届いていないので、まだまだ走れるが、
十年も乗るといろいろなところにガタが出ている。
その際たるものは塗装で、青空駐車が災いしてか、
天井の一部の塗装、正確には塗装の上のクリアというらしいが、
それがどんどん剥げてきている。
修復などはせず、する予定も無く、かまわず乗っている。
 
その昔、ほりさーさんの車の後部ドア付近に、
目立つこすり傷があった。
赤錆が浮き出てきており、かつ車体が白いこともあり、
非常に目立っていたので、「直さないんですか」と聞いたことがある。
 
ひとしきり、この深いこすり傷ができた際の状況を説明したあと、
「そういうことで、この傷は自分への戒めのために残してある」
そう締めくくった。
その一連の話を聞いたときは、なんとなく「そうか」という気がしたが、
いまになって思えば、単に直す金が無かったのだと思う。
いまの私がそうだもの。

3878声 駅ビルの三笠山

2017年06月20日

最寄り駅まで帰ってくると、構内が騒がしかった。
改札脇に貼ってあるポスターを覗くと、
長らく改装中であった駅ビルが、
本日リニューアルオープンとの由。
駅ビルと言っても、駅併設の二階建てとこじんまりしたビルである。
当然ながら開店セールとのことで、どの店も行列ができている。
わわわっと活気にのまれて、人の流れにしたがって、
ひとしきりビルの中を見てまわった。
そこはかとなく「何か買わねば」という心持になり、
目を光らせていたのだが、何かとタイミングを逃した。
若者向けのお店ばかりだったからかもしれない。
結局、以前からそこの同じようにある文明堂で、
昔からたびたび買っていた、三笠山を買って帰った。
昔から変わらぬどら焼きが売っているということは、
とても重要である。

3877声 ストロングスタイル

2017年06月19日

夏めいてきたせいもあろうが、
夕方ないし夜に駅構内をあるいていると、
飲んでいるおやっさんを頻繁に見かける。
気になったのは、飲んでいることでなく、
飲んでいるものの、種類である。
おやっさんたちがぐびびっと飲んでいる、
コンビニ袋に包んである、缶。
その種類。
缶チューハイが非常に多いのである。
銘柄は、近頃人気である、アルコール度高めの、
いわゆる「スロトング系チューハイ」と言われるもの。
それが近頃、圧倒的な勢いでおやったちの心を掴んでいるようだ。
その中に、麦酒を持っている方を見かけると、
すれ違い様、心の中で、「同士」とつぶやいている。

3876声 通り具合

2017年06月18日

先週まで、ばたばたと俳句関係の締め切りが続いていたので、
この週末は俳句のことをあまり考えずに過ごした。
昨晩も麦酒をやや飲みすぎてしまったが、さほど、残っていない。
体調が良くなってきた証左だ。
それだけ、許容、ゆとりがあるのだ。
そういうときは、何を飲んでもぐいぐいと飲める。
もっとも、麦酒しか飲まぬのだが、同じ缶麦酒でも、
一口で、体調のそのときの状態の良し悪しがわかる。
どちらかと言えば味ではなく、喉の通り具合である。
いつもの麦酒がすいすい入るか、入らぬか。
同じ麦酒で味がまずいとき。
それは、賞味期限が過ぎているのであろう。

3875声 静かな花

2017年06月17日

梅雨の晴れ間であった。
二日酔いではなく、睡眠不足に起因するであろう、
頭痛のため、紫陽花などを見てぼんやりと過ごす。
紫陽花はなんと静かな花なのであろうか。
眺めていると頭の中もなんだか静かになってきて、
頭痛もいつしか沈静していた。

3847声 レモンサワー

2017年06月16日

古い友人と会うため、夕方から上野へ出かけた。
アメ横あたりからはじめようと、
大統領やたきおかなど数軒覗くが、
どこも満席で早々に御徒町方面へ流れた。
こちらまでくると悠々と店を選べる。
手ごろな店に入り、焼き鳥などつついた。
駄菓子屋の粉で溶かして飲むジュースのような、
毒々しい色のサワーをがぶ飲みしていた。
この点はずっと変わらない。
 
むかし、この友人と前橋市街の硬派な焼き鳥屋の
暖簾をくぐったことがある。
店内には常連ばかりで、独特なやや重たい空気。
カウンターへ腰掛けると矢継ぎ早に、
煙の向こうの店主から「飲み物は」の鋭い声。
「び、びーる」と私。
その友人はと言えば、長考した挙句、
「カシスオレンジで」と。
その声にかぶさる勢いで、店主から、
「そんなもんあるわけなーだろ、サワーしかねぇ」
とつっこまれ、語尾にバカヤローが付かなかったところは、
店主のやさしさであろう。
圧倒された友人は「じゃ、じゃあさわーで」と難を逃れ、
私も胸をなでおろしたが、その後は煙がいっそう目にしみた。
 
この御徒町の焼き鳥屋は、毒々しい色のサワーが沢山あったので、
私もひと安心であった。
あの前橋の店で「サワー」といったら、レモンサワーなのである。
しかし、あの時の店主のつっこみは、店内全員の声であったろうな。

3873声 鉄のにほひ

2017年06月15日

梅雨の晴れ間であった。
草木が一気に精彩を帯びて、煌いていた。
街にはサングラスやビーチサンダルが、
沢山闊歩しており、夏の匂いがした。
凡兆の句に〈市中は物のにほひや夏の月〉がある。
今日の梅雨の晴れ間は、なにかこう、むわっとして、
市中を通ると、アスファルトや鉄の匂いが立ち込めていた。

3872声 分かるのだが

2017年06月14日

そういえば、ほりさーさんがいまの私くらいの年のころ、
すなわち三十代半ばに差し掛かったころである。
しきりに、「食生活の改善」に取り組んでいた。
それは、マクロビオティックという思想的な流れを経て、
発酵食の実践に至るわけだが、それに取り組もうとした
きっかけが、いまなら分かる気がする。
否、十分に分かるのだが、いまはまだ、自宅の冷蔵庫の
半分をコーラとビールが埋め尽くしている。
変われるだろうか、食生活。

3871声 変わり目

2017年06月13日

梅雨らしく、降ったり止んだりの一日であった。
体調は回復傾向にあったが、今度は口内炎が出来てしまった。
それが、酒を飲んでいることもあってか、
大きく成長してしまい、いま、何をするにも痛い。
しゃべる時も、食事をするときも、痛い。
酔っていると痛みが軽減するので、その時ばかりは非常に楽だが、
覚めた時の苦痛といったらない。
帰り際に購入した安物の塗り薬を患部に塗布しているのだが、
それもしみて痛い。
久しく口内炎になっていなかったので、こんなに痛いものかと、
驚いているくらい、痛い。
三十台中頃にさしかかり、体質の変わり目が来ていると、
この痛みをもって実感している。

3870声 地ビールとクラフト

2017年06月12日

銀座のちょっとした店での宴席より帰宅した。
ビールのラインナップに「那須高原ビール」があった。
スタイルこそひとつしかなかったが、美味しかった。
お店の方はしきりに「地ビール」と説明していた。
地ビールはその名の通り、味わいながらそのビールの地元に、
思いを馳せるのが醍醐味である。
 
ひと昔前、いまのような「クラフトビール」の呼称がなかったころ、
大手の、つまり大量生産されて一般的に流通する以外の、
ビールはおしなべて地ビールとなっていた思い出がある。
そして、それらの多くは土産的な要素が強く押し出されており、
製造しているのも、サイドビジネス的に製造している地場の企業が
多かった。
いまは淘汰されてみな美味しく飲めるが、
当時はやはり味にばらつきがあり、いまでも「地ビール」と聞くと、
敬遠する方も、実際、多く見てきた。
「昔、お土産で買ったどこそこの地ビールがまずかった」と。
 
そんな方でも、「クラフトビール」と聞くと、飛びついて飲んでいる。
確かに、その語感からも、クラフトマンシップで造られる、
一杯入魂のビールが連想され、美味しそうである。
確かに美味しいのだが、「地ビールはまずい、クラフトはうまい」
という図式が定着していることは、地ビールファンとしては悲しい。
だからどう、ということはなく、ただただ、美味しい「地ビール」を
薦めていきたいと思う。

3869声 若竹

2017年06月11日

かかえていた書評におおかたのめどがつき、
ひと段落である。
草むしりをほったらかしていた庭には、
草などが蔓延っているのだが、
やっかいなやつが生えてきた。
竹である。
朔太郎ではないが、
 
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。
 
という具合に、やたらめったら地面から突き出ている。
まだ若い竹なので、枝きり鋏でちょきんとやれば済む。
しかしながら、竹の成長の早さには驚いた。
ほんの一週間前は目立たなかった竹が、
いまは私の背を追い越しているのだから。
月夜に向かってぐんぐん伸びていると思うと、
なんだか不気味である。


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