愛車「ヨコロンデ号」
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時には路地裏で、即興歌を作りながら流しの演奏
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時には福祉施設で、ハーモニカを吹きながら人生を語る
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男は黙ってアルペジオ
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バンドで演奏する時も
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「3,000円くれ、ゆーたら、かみさんにどつかれたわ」。岩渕さんがぽろっとぼやくと、その場の一同が破顔一笑。座の雰囲気が和んだ。そして、岩渕さんから乾杯の挨拶。今宵は、打ち上げの席である。
岩渕さんは、「芝居屋らいぶヨロコンデ」の代表。2005年「劇団ブナの木」を退団し、ヨロコンデ代表として、自ら福祉の現場やイベント会場などで、ラ イブ活動を行っている。そのステージ数は、年間200を超え、会場から会場を飛び回る現場主義を貫く。紙芝居から即興歌、司会から講師まで、その活動内容 は多岐に亘る。その分、福祉施設から村のお祭りまで、活動場所も様々である。ライブの依頼があれば何処へでも、まるで蕎麦屋の出前の如く、愛車の「ヨロコ ンデ号」を駆って行く。ヨコロンデ号とは、ワゴンタイプの白い軽自動車である。「ほな」と運転席の窓から挨拶し、駐車場から颯爽と出て行く岩渕さんが印象 に残っている。
宴も酣。一本締めで打ち上げも無事に終演し、一同漫ろに、居酒屋の入り口付近に留まっている。「カラオケでも行こか」と言う岩渕さんの声に、蜂の子を散 らす様に、一同が帰って行く。数時間前に、満席のベイシア文化ホール、小ホールのステージで声を枯らしながら歌っていた岩渕さんを気遣って、皆、帰って行 くのだ、おそらく…。今日もきっと、群馬県内の何処かの道を、ヨロコンデ号に乗って鼻歌でも歌いながら走っている筈だ。
(文: 抜井 諒一) |