 この暖簾があると、安心する
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 緑茶を啜りながら、お昼の番組を見るのも、食堂の醍醐味
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 玉葱が輝いている、王道の食堂カレー
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 冷やし中華も逸品
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 メニューは豊富な品揃え
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上信電鉄の終点「下仁田駅」を下車し、歩く事およそ5分。昭和の面影を現代に残す、懐古的雰囲気の商店街、「中央通り」がある。商店街の中程まで来ると、往来に揺れる紺暖簾が目に入る。暖簾に白く抜かれた文字は、「大衆食堂」。人気の無い往来に漂う、風格ある暖簾は、どこか誇らしげにたゆたっている。
暖簾をくぐると、テーブルにパイプ椅子、壁掛けメニューと言った、王道の食堂スタイル。着席すると、女将さんが緑茶を持って来てくれた。来客年齢層が、チラと窺える。麺類、飯類共に、品揃え豊富。群馬の食堂全般、特に西上州の食堂で力を入れているカツ丼。を注文したいのだが、今日はカレーライスを注文。
コップにスプーンが投入されており、かつ味噌汁が付いている。その和式カレーセットを見ると、なんだか嬉しくなってしまう。「食堂のカレーライスはコレだ」と、なんだか独りで息巻きつつ、カレーライスを平らげる。その具材は、玉葱と肉のみが確認できるシンプルなもの。昭和時代に青春を送った世代ならば、「懐かしい」と形容される味なのだろう。しかし、私は、そのもったりとした舌触りとほのかな甘さに、むしろ新鮮な味を感覚した。
斜向かいの席では、常連客である近所の御婆ちゃんと女将さんが、茶を啜りながら談笑している。その光景が溶け合い、煮込むほどに甘みを増す玉葱のように、やさしい甘さが店内を包んでいる。
(文: 抜井 諒一) |