【名店のしきたり】 第27回　味のホームランバッターは今も健在（高崎市）

「巨人、大鵬、卵焼き」と言う文句を、つい連想する。その店の屋号、「ホームラン軒」の看板を見ると、である。昭和時代の中頃。日本が高度経済成長期と呼ばれ、日本経済が毎年躍進し、社会全体に活気が漲っていた時代。現在20代後半の私は、勿論、生まれていない。過去の映像や印刷物でなく、その時代の息吹きを体感できるのが、老舗食堂なのである。
旧群馬町を貫く県道25号線は、渋川市と高崎市を結んでいることから、「高渋線」と呼ばれている。古くは、「三国街道」として栄えた、旧街道。旧群馬町出身の人間（それは筆者の事でもある）が、町内で買い物に出掛けるとすれば、まず「中泉」と言う事になる。つまり、町内で一番繁華な場所だった。過去形なのは、郊外に大型ショッピングモールが出来た事による。その、謂わば町内の一等地に店を構えるのが、この食堂なのである。
学生時分。中泉に住む友人宅へ遊びに行くと、玄関にこの店の丼が出してある光景を何度となく見た。町内で店屋物を取るってぇと、真っ先に名前が挙がる食堂。それ程、味や商売に定評がある。その店内は、テーブルと座敷の正調式食堂スタイル。メニューは豊富でどれも安価。ラーメンは、勿論、昔ながらのさっぱりとした醤油味。日替わりのサービス品があり、非常に安価で定食が食べられるのが、名店たる由縁であり、魅力。個人的には、美味くて安い「中華丼」を推す。

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