 創業昭和12年の風格
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 天気の良い日、往来を眺めながら、清々しい食事が楽しめる
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 伝家の宝刀二刀流、これが「ラーメン定食」なるぞ
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 人数居れば、お座敷で
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 各新聞、情報誌にも掲載
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2両繋ぎのその電車は、ブリキ玩具の如く、愛嬌がある。終点の上信電鉄「下仁田駅」を出て、駅前の道、中央通り商店街へと歩を進める。山の麓から流れる清流「鏑川」に沿って開かれたこの静かな街は、旧街道の懐古的な雰囲気を現代に留めている。商店街の入口を、川方向に折れ、「しののめ信用金庫下仁田支店」の斜向かいに、本日のお目当て、創業昭和12年の老舗食堂である「きよしや食堂」が、ひっそりと居を構えている。
この店の「カツ丼」目当てに、遠方から足を運ぶ客も多い。と言う情報は、群馬の大衆食堂フリークなら、一度は耳に入れた事あるのではなかろうか。秀逸との評判高きカツと、伝統製法で作るラーメンを一度に味わえるのが、「ラーメン定食」である。定食界で言えば、盆と正月が一緒に来た様な、夢の組み合わせである。しかもこの量で800円と言う安さ。これだけでも、根が貧乏性な私には、とてもうれしい。そして、量、価格もさることながら、とにかく美味い。とくれば、これはもう、幸せを感じざるを得ない。幸せへの道は、考えようによっては実に単純である。
肉厚で柔らかなカツは、卵でとじず醤油だれにさっとくぐらせる。これによって、揚げたてのカツの香ばしさと食感が保たれる。皿に載っているカツをご飯に載せれば、カツ丼にもなる。手製カツ丼片手に懐古的な醤油ラーメンを啜れば、なんとも至福の正午が、穏やかに過ぎて行く。
(文: 抜井 諒一) |