 路地裏の懐古的一軒食堂
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 昭和情緒が醸し出ている、あたたかな店内の雰囲気
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 カツがご飯の上でスクラムを組んでいる、ヒレソースカツ丼
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 「おもいでつづり
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 品格を感じる店先と白暖簾
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「温故知新」なんて程、大層な事でもないが、この老舗食堂には連日、若い客が訪れている。「一二三食堂」。この店の名である。高崎市街地、南銀座通りの裏。住所を記すと、高崎市宮元町。昭和3年から続く老舗食堂で、過去、雑誌や新聞に掲載された事がある、地元有名食堂。
その佇まいは、路地裏の懐古的一軒食堂。しかし、その純和風な外観から想像し得る客層に反して、若いカップルや女性の独り客が、ひっきり無しに暖簾をくぐっている。30席も入れば満席と言う、決して広くは無い店内は、昼時ともなれば相席で埋まる。年季を感じる木机、骨董品と思しき鏡など、昭和情緒を醸し出す設えが、店内の雰囲気を演出している。
席へ座り、先程注文した、ヒレソースカツ丼を待つ。待つ間、机脇に置いてある、来店記録帳の頁を捲る。東京、千葉に茨城、栃木。遠方からの来店者が多い事に、一寸、驚く。国道沿いの有名店ではなく、高崎市街地の路地裏食堂を目指して来るのだから恐れ入る。高崎市民のはしくれとして、私も胸中で礼を述べる。
運ばれて来た御膳。ご飯の上で、スクラムを組んでいるかの如くに、立っている肉厚なヒレカツが3枚。カツ丼と言えど定食になっていて、一汁三菜が付いてくる。勿論、肉軟らかで美味い。チェーン店の即席な味ではない、かけがえの無い味や雰囲気。それを気付かせてくれる店ってのが、名店なのかも知れない。
(文: 抜井 諒一) |