【名店のしきたり】 第12回 夜霧に迷い辿り着いた赤提灯(太田市)

更新日:2009年06月12日


夜霧に光る看板に吸い寄せられ

薄明かりのカウンターには、昭和末期的情感が漂う

生麦酒と刺盛り 静かに静かに、飲み、味わう

500円食べ放題システム

巨人戦を観る背中は渋い

意気消沈かつ戦意喪失していた。つい先刻より振り出した五月雨に降られながら、住宅街の路地を彷徨う。次第に濃くなって来る夜の色が、焦燥感を煽る。一向に見つからぬ銭湯。一向に降りやまぬ雨。既に方向感覚を失っており、出鱈目に曲った路地の先、ぼんやりと夜霧に光る、飲み屋の看板。
吸い寄せられて、入口、赤提灯に書かれている屋号は、「なべさん」。直感的に名店の匂いを嗅ぎ分け、雨宿りと銭湯情報の収集を兼ねて、暖簾をくぐる。店内はカウンターと座敷があり、カラオケを備えた、一般的な居酒屋内装。薄明かり照らされる、壁貼りメニューが並ぶカウンターは、昭和末期的情感を感じさせる。
カウンターに座り、麦酒や肴を見繕って注文。「後の冷蔵庫につまみ入ってるから、好きなだけ食べてね」と声を掛けてくれたのは、包丁を握る店主の渡辺さん。この店のお通しは、500円で食べ放題。冷蔵庫には、特製のつまみが各種並んでおり、御飯まで有る。多彩なつまみが低料金で楽しめ、生麦酒がぐいぐい進む。渡辺さんに、付近の銭湯の事を尋ねると、詳細情報を教えてくれた。直ぐ近くに在った「新島湯」は、ついこの間、店を閉め、取り壊されてしまったとの事。戦前建築である風格建物も残っておらず、今は更地になっている。どうりで見付からぬ訳だ。移り行く街へ想いを馳せ、二人しか居ない店内は、しばし、無言。

(文: 抜井 諒一)

店名 なべさん TEL 0276-45-8645
マスターの名前 渡辺さん URL
通称 なべさん 営業時間 要確認
住所 太田市新島町 定休日 要確認
アクセス 「太田駅」南口方面、「市立中央小学校」西側

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