 天井に、思い入れのポスター
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 誰もが一度は顔を出していく さしずめ「夜の関所」である
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 ベルトの写真は、伊勢崎が誇る悪役レスラー その名も「ミスターポーゴ」
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 試合前の精神統一か
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 酒の肴に「あぶらーめん」
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ずいぶん前のこと、本屋で「プロレスラー名鑑」を立ち読みしていて腰を抜かしそうになった。よく行くラーメン屋のマスターが載っていたからである。
伊勢崎駅の改札を出て道なりに南へおよそ750m。伊勢崎の夜の入り口、呑龍通りの角にラーメン屋がある。店の名は、「ラーメンハウス」。飲んだ後に来るお客さんが多いというこの店の開店は、夜も深くなる頃の10時。
店に入ると目に飛び込んでくる、所狭しと壁に貼られたプロレスラーのサイン。お客さんは口を揃えて、店主のことを「ラーメンマン」と呼ぶ。でもまさか、その人が「プロレスラー名鑑」に載っているとは。
プロレスはよく、真剣勝負ではないと言われる。ロープに人を放り投げてちゃんと元通りに帰ってくるなんておかしい、と言うわけである。でもレスラーは明らかに、真剣だ。真剣にロープに投げられて、真剣にそのまま帰ってくる。大切なのは勝ち負けだけ、というのであれば、これは真剣勝負ではないかもしれない。だがプロレスには、それ以外にもう一つ、大事なメッセージがある。それは勝負とは真っ向から反するところにありそうな、思いやりだ。ファンは、この相半ばする二つをリングの上に見て、人生を重ねるのである。
ラーメンハウスは、そうした人生の縮図のような店でもある。マスターの人柄がそうさせるのか、お店の場所柄がそうさせるのかはわからないが。
(文: 堀澤 宏之) |