 鰻を手土産に行く先はいずこ
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 しこたま飲んだあとの極上の贅沢
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 本格派のうなぎが1,000円から食べられます
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 お客さん、忘れ物です!
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 深夜3時まで営業中
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前橋市の繁華街、千代田町。県庁前のけやき通りを道なりに、国道17号線から三つ目の信号を左に折れたら始まる、眩しい世界。夜も8時を過ぎる頃にはどこからともなく呼び込みの黒服が表れてくるこの街の中心に、一軒のうなぎ屋がある。
2004年からこの場所で店を構えるその方は、和服の似合う女性である。うなぎ屋といえば一家言ありそうな因業親父のいるところ、というのはよくある偏見かもしれないが、それにしても着物美人が切り盛りするうなぎ屋というのは聞いたことがない。
取材を申し出るときはいつも緊張するが、今回はまたそれが妙に不自然になってしまったのも、一度その暖簾をくぐられた方ならわかるはずである。
千代田町というのは、居酒屋、赤提灯から、スナック、クラブまで、ことアルコールを提供する店でない店はないというくらいの飲み屋街である。場所柄、完全に出来上がって来られるお客さんも多いというこの店は、深夜3時まで営業している。県内でも数少ない、いや、おそらくは唯一、心ゆくまで飲んだあとの「仕上げはうなぎ」を実現してくれる店である。
トリが客を裏切ってはならないのは、演芸場だけの話ではない。たとえそれが夜の街であっても同じである。最後にあそこに行けばいい、という安心感もまた、酒をうまくするのである。
(文: 堀澤 宏之) |