 屋号の無い紺暖簾が渋い
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 脱衣場には夕日が差し、佇むおやっさんと相まって、叙情的雰囲気
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 湯船に漬かって見渡せば、築100年の歴史の息吹きを感じる
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 骨董級の扇風機
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 これまた古風な下足入れ
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一先ず、佐野厄除け大師を目指す。週末の街はひっそりとしているが、厄除け大師には、大型観光バスが断続的に停まっては出て行く。佐野駅から歩く道すがら、ギオン通りと言う通りを抜けて来たのだが、往来に建つ案内板を読むと、「料亭や飲食店が軒を連ね、どこからともなく三味線の音が聞こえる粋な街並みでした」と記載されている。なるほど、花柳界と銭湯との関係は深い。かつては数多くの銭湯が市内に犇めいていたのだろう。かつての栄華に思いを馳せ、厄除け大師脇の細い路地へと歩を進める。
聳えるブロック煙突の下、簡素な外観が特徴的な「おばな湯」が建っている。鉄の玄関扉を入り、屋号の無い、これも簡素な紺暖簾を潜る。玄関から、男湯の硝子戸を開け、番台のおやっさんに350円を払って脱衣場へ入る。
脱衣場は板張りで広々としており、ロッカーは設置されていない。籐の脱衣籠へ衣服を入れ、浴室へ入る。長細い浴室には、浴槽が1つ。深浅で仕切られており、浅い槽にはジェット噴射が2基。湯温は激熱。カランは右5、左5基の計10基。シャワーは右のみに設置。ペンキ絵、タイル絵は無し。男女の境がすり硝子、これも歴史背景を感じさせる造りである。
湯上り。おやっさんに、伺ったのだが、この銭湯は築100年程は経過している御大。改装を繰り返して来たが、浴室の梁などは当時の木材のままとの事。
(文: 抜井 諒一) |