 鉱泉宿であり鉱泉銭湯でもある
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 シャワーは無く、カランのみのシンプルな造り
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 滝越しの富士山を眺めながら、鉱泉の軟らかな湯を浴む
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 冷蔵庫中には瓶ジュース類
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 マッサージ機が時代の証人
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車は富岡市街を抜け、鏑川沿に沿って開かれた小高い山道を進む。渓流の緩やかな流れが、この大島の土地を穏やかな様相にしている。「北向観音」へと続く道の脇、古びた街灯看板の出迎えに、道が間違っていなかったと一安心。看板の先、煙がたなびく煙突の下に、小川の畔に佇む「大島鉱泉」が見えて来た。
この「鉱泉」ってのは、平たく言えば「冷たい温泉」である。日本の温泉法によると、25度以上でなければ温泉と定義されず、それ未満の湧水は鉱泉となる。ここ大島鉱泉は、日帰り入浴もできる「温泉宿」でなく「鉱泉宿」と言う事になる。鉱泉宿の方が、私などは新鮮な印象を受け、好奇心を刺激される。そして、「群馬県公衆浴場業生活衛生同業組合」に加盟している、公衆浴場でもある。だから360円と言う銭湯価格で、湯に浸かれる。
入口に番台は無く、設えは古風な宿の雰囲気。すり硝子戸からは、趣ある中庭の景色が見える。奥にある脱衣場入口にはしっかりと、「ゆ」の暖簾が掛かっている。こじんまりとした脱衣場は板張り、脱衣籠はプラスティック製。
浴室はタイル張り、奥の壁にはタイル絵がある。富士山の前に滝が流れ落ちている図柄。その下に浴槽が一つ。湯に浸っていると、「鉱泉だから体が温ったまるよ」と、裏で湯を沸かしている女将さんが教えてくれた。午後の日が満ちる浴室で、ゆったりと湯を浴む。
(文: 抜井 諒一) |