 開店早々、軒先に自転車が並ぶ
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 広々とした脱衣場 天井の空色が開放感を演出
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 浴室にはいつも、女湯から上がる賑やかな話声が響く
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 浴室、狸の楽団がお出迎え
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 風流で涼やかなタイル絵
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「ロータリーの直ぐ傍」と言われても、桐生地元民ではない私は、その場所を容易に推測し得ない。もう一度場所を聞き直すと、どうやら、錦町通りと昭和通りが交差する、錦町十字路交差点の事らしい。先程から熱心に、「上の湯」の場所を教えてくれる、このおやっさんを、私は知らない。しかし、道を尋ねるべく、私が声を掛けた、このおやっさんの様に、現在でも根っからの桐生っ子は、この交差点を「錦町ロータリー」と呼んでいるようだ。
来てみると、確かに、ロータリーの直ぐ西側の路地に、上の湯があった。現在時刻は午後3時15分だと言うのに、30分からの一番風呂を貰う為、男女合わせて7、8人が待っている。私も急いで加わり、玄関戸が開くと、慌ただしく雪崩れ込んだ。
脱衣場は広々としたフローリング張り。床には莚が敷いてある。天井も高く、空色の柄が開放感を演出している。衣服を籐の脱衣籠へ入れ、鍵付き木製ロッカーの横へ置いたら、浴室へ入る。
浴室もこれまた長方形に広く、水色の床タイルが涼やかである。それを一層際立たせるのは、浴槽の背後に描かれたタイル絵であろう。錦鯉や燕、鴨や家鴨が、颯爽と水辺で憩う図柄。その横壁には、なんと、開け放たれた窓の騙し絵。これは珍しい。浴槽は1つで深浅に仕切り。ジェット噴射は浅槽に3基。カランは右5、左3、真ん中10基の計18基。シャワーは右のみ。男湯、瓶牛乳販売は無い様子。
(文: 抜井 諒一) |