 店の前の往来上空は、電線の網
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 入口、小粋な痩松と、味のある紺暖簾が風情を演出
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 迫力ある富士山は、眺める人に活力を与える
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 夜に灯る「ゆ」マーク
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 カラフルに占領された木棚
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信号「仲町」を元町方面へと進むと、往来左手に在る「松の湯」。近所の「梅の湯」からは、徒歩2分程。その外観は、2階建ての木造日本家屋風。屋号の通り、入口脇には、痩松が2本植えてある。枝を落とした佇まいが小粋だ。入口にたゆたうのは、屋号が白く抜かれた渋い紺暖簾。奥には男女に別れた硝子戸。開けて直ぐ、玄関脇に番台。座している女将さんに330円を払って、脱衣場へ上がる。
下足入れを利用せず、玄関に靴を脱ぎ置くのが慣習らしい。本日は、日曜の夕方。下足の数は多い。板張りの脱衣場はロッカーでなく、木棚。しかしこの木棚、常連の物と思しき入浴道具で占領されている。ここも、籐の脱衣籠に衣服を脱ぎ置くのが慣習。軽い雰囲気が、良い。
脱衣籠を隅に置き、浴室へ入る。まず目を引くのが、奥のペンキ絵。男湯にあるペンキ絵は、迫力ある富士山。所々剥げたペンキが、経年を感じさせる。室内、なめらかな白タイルが涼しげである。桶は汎用。カランは右に4基、左に2基、真ん中に6基の計12基。シャワーは右左のみ。浴槽は1つで深、浅にしきり。浅槽にのみジェット噴射がある。激熱の湯温ゆえ、私、中腰で2、3分入るのが精一杯。
上がって、20円のコイン式ドライヤーで髪を乾かす。冷蔵庫には瓶牛乳無し。居合わせた常連さん同士、3、4人、親しげに女将と世間話。界隈の情報交流場所となっている様は、古き良き光景である。
(文: 抜井 諒一) |