真髄を究める路地に煙突
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褪せた暖簾、その佇まいから滲みだす市井の歴史
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「ワタラセアートプロジェクト2008」で描かれた壁画が生む、存在感
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2連の蛍光灯が良い
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下足入一体型番台
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大間々駅前通り商店街。その中に在る、煉瓦煙突の建つ古風な醤油屋、岡直三郎商店。その店舗脇を細い路地へと進む。幅の狭い路は舗装されておらず、バラックの建つ昭和的懐古風景が残っている。路地の丁度中頃まで来ると、Y字路の角に佇む「千代乃湯」と出くわす。経年劣化の進んだ、民家風木造建築の外観と、白抜き文字が下半分で破れている、つぎはぎの褪せた紺暖簾の風格に圧倒される。全体から滲み出る歴史が、風に薫っている。
硝子の引き戸を空けると、玄関脇に下足入れが一体化している、木製番台。その番台が、玄関での男女の境になっている。親父さんに360円を払って脱衣場へ入る。ロッカーは無く、籐の脱衣籠のみ積んである。県内銭湯で良く見かけるマッサージ機、稼働していない冷蔵庫、その脇にはエレクトーン。なるほど、先ほど路地を歩いていた時に微かに聞こえた、旋律の正体が判明。瓶牛乳販売は無し。
浴室へ入ると、壁画の現代アートが目を引く。これは、「ワタラセアートプロジェクト」の一環で、若手アーティストが描いた物。白タイル張りの室内に、風景ではないペンキ絵も魅力的。通気性に富んだ吹き抜けの天井。カランは左に5基、中央に4基でシャワーは無し。男女の湯の仕切りの上部は厚い硝子。背の高い人ならあわや、状態。浴槽は一つで深浅に仕切り。薪で焚く湯は熱過ぎず、心地良い。
(文: 抜井 諒一) |