夜風に揺られたゆたう暖簾
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雑然としている脱衣場、異種生活感の渦
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カランの数も多く実用的な浴室 後ろのペンキ画は外されている
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メイトーのコーヒー牛乳
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当然、中は常連さんの荷物
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伊勢崎随一の繁華街である本町通り。立ち並ぶ店は煌々と電飾を輝かせ、夜の往来を行き交う酔客を誘っている。そこから一本、路地へ入ると旧市街の風情を残す街並み。そんな酔街に根を張る憩いの場として、地元民に長年親しまれてきたのが、此処、「寿美乃湯」なのである。
まず目を引くのが、1925(昭和元)年に建築された、西洋古風で趣のある外観。私が撮影したのは夜だったが、昼間に見るとより、風情を感じる。まさに、伊勢崎市における市井の文化遺産。
ぼんやりと、柔らかな光に照らされている暖簾。くぐるや否や、番台のおじいちゃん。「お暑つぅございます」って、声を掛けてくれた。その何気ない小さな心遣いに、心の奥が大きく揺さぶられる。挨拶し、360円を払って脱衣場へ入る。
脱衣場は、こじんまりかつ雑然としている。木製ロッカーを空けると、常連さんの荷物がぎっしり。部屋全体に、異種の生活観が渦巻く。吸い込まれる様に、籐の脱衣籠へ衣服を入れて、同化してゆく。
浴室もこじんまり。カランは左に6基、真ん中に8基で、右側には無し。シャワー付き。桶は汎用品。浴槽は一つで深、浅に仕切り。ジェット噴射は無し。湯温も適度で入り易い。ラジウム(ラドン)温泉のホーロー看板を読みつつ長湯。
湯上り。コーヒー牛乳120円はメイトー謹製。番台の横の20円ドライヤーで、小賢しく髪の手入れをしつつ、牛乳グビッ。
(文: 抜井 諒一) |