ツタに覆われた煙突
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路地裏の歴史を伝える暖簾が揺れ、そこに「暮らし」がある
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左と前面にカランがある、特徴的な浴室構造
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年季の入った脱衣籠
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近隣に在る成田山光徳寺
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東京下町にも引けをとらない、粋でオツな銭湯が、高崎市の路地裏にある。本町2丁目の信号を成田町方面へと入る。住宅街の路地を縫って進むと、ツタに覆われた煙突が顔を出す。青空に映える緑塔は、積み重ねて来た時代を映している。
銭湯入り口に見る、緩い弧を描く屋根と重厚な鬼瓦は、まさに県内銭湯文化の証人。創業は大正10年、現在の建物は昭和4年建築の御大。威圧感十分。なんだか改まった心持で入店。
天上の高い木造建築の脱衣場は、伽藍を思わせる。室内左側には、味のある木製ロッカーと脱衣籠。手前に瓶牛乳の入った冷蔵庫。そしてその横には、アイス用冷凍庫もある。
硝子戸を開け、ケロリン桶を手にとって洗い場へ。歴史ある銭湯なので、シャワー無しの洗い場を想像したのだが、左と前面に並んだカランには、しっかりと丸鏡と小振りのシャワーが備え付けてある。
浴槽は一つで深浅しきり。女湯側の壁には、水槽が埋め込んである。現在は水は張っていない様子。深層に入ると、これまた湯温激熱。湯に浸かって、握り拳を作ること10秒でギブアップ。ほうほうの体で浴槽から上がり、浅槽に避難。「若けぇの、修行が足りんぞ」って、天からの声。ふと、お銭湯様に諭された気がした。
湯上がり、手拭いを肩に扇風機の風を受けながらながら、アイスモナカをかじる。ゆったりと流れる時間に、テレビから大相撲中継の声がふわり。
(文: 抜井 諒一) |