盛夏の中に浮かぶ路地
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午後の陽は通りに長い影を落とす
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大衆食堂で一息
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暑い日はコレに限る
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揺れる暖簾は誇らしげ
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上信電鉄の終点、下仁田駅。
駅前から諏訪神社まで続く、下仁田中央通り商店街は盛夏の午後に浮んでいた。
誘われる様に細い路地へ入る。
食堂に写真館、肉屋に雑貨屋と言った商店がこじんまりと並ぶ穏やかな商店街。
中にはチラホラ閉まっている建物も目に付く。長い間戸を閉ざし、刻が止まってしまったかの様な建物。
入り口に目をやると、「撞球場」の文字。どうやら、その昔はビリヤード場だったらしい。
ふと頭の中に、撞球に興じる当時の人々の活き活きとした姿が空想される。
考えつつぼーっと突っ立っている間にも、盛夏の陽は容赦なく照り付けて来る。
すぐ横の、大衆食堂すずきやに一時退却して一休み。
どこか懐かしい空気の漂う店内。
冷やし中華を注文。
製氷皿そのまんま出し型の氷が二つ、てんこ盛りの冷やし中華にドカンと添えられている。
「やはり、日本の夏はコレに限る」。
などと呟きつつ店を後に。
通りに出ると、午後の陽が長い陰を落とし始めていた。
すぐ其処、諏訪神社まで言ってみる事に決め、歩き出す。
一寸振り返ると、生温い風に吹かれ、大衆食堂の紺色暖簾が誇らしげに揺れていた。
(文: 抜井 諒一) |