 瓦屋根のどっしりとした外観
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 夕暮の岬に佇む灯台が、抒情的である
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 線の丸いタッチと明るい色調が、アニメ調に思える不思議なペンキ絵
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 ガラス一枚見ても古風
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 「手打ちうどんのまち」でもある
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埼玉県の北東にある加須市。東武伊勢崎線の「加須駅」北口から徒歩5分程度、目抜き通りを左に折れてすぐ。奥まった住宅街にあるため、その外観の全容は確認しずらいが、東京型の堂々たる木造建築。駐車場の脇を抜け、暖簾のない開けっ放しの入口をくぐる。
玄関と脱衣場の間に扉は無く、とても風通しが良い。ソファーに腰掛けていらっしゃるご主人に湯銭を払い、まず、お願してひとしきり写真を撮らせて頂いた。脱衣場の古風な建築様式には目を見張るものがあり、ご主人に尋ねると、東京オリンピックの前年、と言うことは、昭和38年。大工さん含め家族総出で手伝いつつ、建て替えたのだと言う。そして、その時分からほぼ大きな改修無く現在に至っている。色褪せ乾いた柱の奥から、なんだか、当時の活気ある声が聞こえて来そうである。
浴室へ入ると、男女にかかる大きなペンキ絵が目をひく。描かれている明るい山湖の景は、そこはかとなくアニメ調である。そのペンキ絵の下と、女湯との境にあるモザイクタイル絵も豪勢で、南国風の魚が遊泳する図と、夕景の岬に佇む灯台の図。カランは左5、真ん中8、右5基。シャワーは左のみ。浴槽は一つで深、浅に仕切り。浅槽にはジェット噴射が2基。天窓から差し込む西日が、琥珀色の湯の上にとろとろと溜まっている。浴槽から、静かな時間が溢れてゆく。
(文: 抜井 諒一) |