仕組まれたプログラムを実行するロボットのように、
昼には決まって勤め先から近い立ち食いそば屋に行く。
今日も背中を丸めてそばを啜っていると、厨房からである。
「おはこび一丁」
と言う威勢の良い声が、混雑している店内に響いた。
すると、おばちゃん店員が人波をするする抜けてやってきて、
もりそばを店の奥の席に腰かけている初老の御仁の前に運んでゆく。
御仁は軽く会釈をすると、静かにそのそばを啜り始めた。
立ち食いそば屋においてそんな特権的なことが通用するのかと驚いたが、
すぐそのあとで、なかなか良いと感じた。
御仁も店員も実に爽やかだったからである。
例えば、「そばを食べに来たお殿様」みたいに、
落語にでもなりそうな一幕だった。
シャツに飛び散った汁をふき取りつつ、店を後にした。
【酒】
エビスロング缶二本
【天候】
台風一過で秋晴れ。
めっきり秋めく。