425声 銭湯の趣き、眼鏡の傾き

2009年02月28日

昨日行ったのは、日頃から良く利用する日帰り温泉施設である。
湯に浸かっていると、隣の打たせ湯に入って来た、おやっさん一人。
湯が背を打つ音、響き、気持ち良さそうに打たれている。
その光景を、横でぼんやりと見ている、私。

右の背から、左の背と来て、打たれ箇所をゆっくりと脳天にズラしてゆく。
すると「ベチベチベチッ」と、一層、湯の打音と飛沫が強くなる。
瞬間、脳天から脱線した打たせ湯が、おやっさんの顔面を通過。
掛けていた眼鏡が、一気に湯の中に落ち、揉まれる。

慌てて両手を湯に突っ込んで、眼鏡サルベージを試みる。
その姿が、やすきよの漫才と言うか、ドラえもんの野比のび太とでも言うか、
つまりは滑稽である。
更には、その間にも打たせ湯が、無防備な背中を直撃している。

漸く、湯の底からの引き上げに成功し、眼鏡をかけて安堵の表情。
私も無表情を装いつつ、胸を撫で下ろす。
曇った眼鏡のおやっさん。
その顔を良く見ると、前に一度、市内の銭湯で会い、
銭湯の趣について立ち話をした人。
おやっさんは私の事を、気付いたかどうか。
掛けた眼鏡は、少し右に傾いていた。