3762声 石牟礼道子

2018年03月02日

今年、生涯に渡って新潟水俣病患者についての著書を書き続けた石牟礼道子さんが亡くなった。僕は残念なことに彼女の本を読んでいないのだけれど、ラジオの追悼番組で代表作である『苦海浄土 わが水俣病』の一節をアナウンサーが朗読し、その言葉のあまりの重さに目眩がした。

 

「銭は1銭もいらん。そのかわり、会社のえらか衆の、上から順々に、水銀母液ば飲んでもらおう。上から順々に、42人死んでもらう。奥さんがたにも飲んでもらう。胎児性の生まれるように。そのあと順々に69人、水俣病になってもらう。あと100人ぐらい潜在患者になってもらう。それでよか」

 

また、先月末の新聞には彼女が残したこんな言葉が綴られていた。

 

「手に盾ひとつももたぬものたち、剣ひとつ持たぬものたち、権力を持たぬものたち、全く荒野に生まれ落ちたまま、まるで魚の胎からでも生まれ落ちたままのようなものたちが、圧倒的強者に立ちむかうときの姿というものが、どんなに胸打つ姿であることか。しかも死にかけているものたちが。もっとも力弱きものたちが人間の偉大さを荷ってしまう一瞬を、わたしたちはかいま見ました」

 

言葉には魂が宿り、それは年月を経てもなお、残り続ける。