4125声 桜 super love

2019年03月01日

「入院先で状況が芳しくない」という電話があったのが21時。自宅へ戻り母と姉を車に乗せて病院に向かった。おじさんは、奥さんと娘が見守るなか、酸素吸入器が上下するような大きな呼吸を繰り返し、けれど今は多少状況が落ち着いて眠っているんだよ、ということだった。

 

ベットそばの丸椅子に座り、声かけをするわけにもいかないのでおじさんの顔、薄い布団をまとった胸、細い足、そしてまた顔をまじまじと見つめた。しばらくそうしていた。奥さんに席を譲り、今日のところは僕らは帰ろうと母たちと病院の外へ出た時は0時を回っていた。

 

「君がいないことは 君がいることだな」

 

それは恋人でも、近しい人でも、遠い人でも、ただ離れたのでも、死別したのでも・・・いなくなった人のことは「無」にはならない。知ってしまった、会ってしまった、好意をもった、憎しんだ、からには、私の中にはなにかしらのあなたが残る。今夜のぼくは、何かに抵抗したいと思った。けれどできたことは、ただまじまじと見つめることだけだった。