「大丈夫、私は音楽だから」というセリフはさそうあきらによる名作漫画「神童」で、野球に熱中するやんちゃ少女ながらまさに神童ばりの神がかったピアノを弾く主人公、成瀬うたが、突然世界的なオーケストラの楽団のピアノ演奏を代役することになり、そのプレッシャーを微塵も感じさせず言い放つセリフである。
それと同じセリフが言える選ばれし音楽家はきっと世界には何人もいるのだろうが、中村佳穂の音楽を聞いた時に、本人は言わないまでも、ああこの人は音楽だな、と思った。
中之条町で小さな書店「フクロコウジ」を営む原沢さんから、2年越しの中村佳穂コンサートのお誘いを受けた。昨年も誘っていただきタイミングが合わず、今年は高崎音楽祭で演奏するとのことで2つ返事で行きましょうと伝えた。
実際ホールに入ってみて、今夜の演奏はトウフビーツがメインで、それとコラボしていた中村佳穂や、DJ繋がりでテイトウワが来ていた事を知り(遅い)演奏の8割はズンドコDJサウンドで場違い感もあったのだが、冒頭の中村佳穂ピアノソロを存分に聴き入った。
わりと初期から聞いていた身として、バンド編成も変わり、自分の音楽を求めるがゆえに他メンバーとの確執もあるのかななどといらない心配もしていたが(初期の曲を聴くと、今はいないメンバーのギターが聴こえて来る気がする、など)、たった一人のピアノソロでも寂しくはない、ピアノとボーカル以上の沢山の音が降り注いだような瞬間があった。やはり、中村佳穂は音楽なのだろう。