1051声 腐った朝

2010年11月16日

今朝は冷えて、前橋市では初氷を観測した。
寝床から這い出すのが、日を追う毎に億劫になってくる。
それでも、意を決して、掛け布団を跳ね除け、窓のカーテンを一気に空ける。
空けた瞬間の、朝日が部屋に注いで、満ちて行く、あの透明な空気感は、
とても清々しい。

清々しい。
のだが、今朝はちと、異変が起こっていた。
朝の清浄な空気を深呼吸した瞬間、微かに鼻腔に感じる、異臭。
麻薬捜査犬の如く、くんくん、くんくん、と部屋の中の臭いの発信源を、
捜査して行く。
どうやら、物の在処は、この蜜柑箱の上に、無造作に乗せられている、袋らしい。
袋を手にとって、中に鼻を突っ込んで、大きく息を吸う。

そこが、犬と人間の違いで、かかる危険を察知できなかった。
鼻から雪崩れ込んで来た臭いは、強烈な腐臭。
烏賊の塩辛をレンジでチンしたら、こんな臭いがしそうである。
つまりは、瞬時に吐き気を催す生臭さ。

袋に印字してある店名を見ると、合点が行った。
中身は、先日行ってきた湯河原、その駅前の土産屋で購入した、小鯵の干物。
干物なので、冬場の常温で大丈夫だろうとタカをくくり、
部屋の隅にほっぽらかしてあったのだった。
今週末に、おそらく仲間内で飲む事になるであろうから、
その際に持参しようと考えていた。
が、甘かった。
冬場とは言え、部屋の中は温暖。
その室内温度によって、腐敗してしまったのだろう。

それにしても、一気に嗅いだ匂いの、強烈な事。
体が、完全に受け付けないと言うサインを、鳥肌と吐き気で出している。
臭いを思い出しただけでも、胸やけするが、
未だそこに置いてある袋の中身を想像するだけで、背中に寒気が走る。

【天候】
終日、空気の澄んだ、穏やかな冬晴れの一日。