今年、実家の隣の空き家を借りた。その一室には自前の安いプロジェクターとスクリーン、そこそこポータブルだけど低音に強いJBLのスピーカーを置いて「映画の部屋」を作った。環境を作って満足でまだ全然観てはいないが今夜は『オール・アバウト・マイ・マザー(ペドロ・アルモドバル/2000)を観た。
名だたる映画祭で大賞を取り、鮮烈とも言えるメインビジュアル(金髪で真っ赤に唇を塗った歳のいった女性の大きな顔が貼られた壁の前で、もう一人の女性が立っている)は忘れ難いが、15年くらい前に見てはいたものの内容をすっかり忘れていた。見始めて、ある程度進んでから思い出す。最愛の息子を事故でなくしたマヌエラを中心に、登場人物たちの人生の悲喜交々が描かれる。いい映画だった。
特に、マヌエラが元旦那と再会するシーンで、前回見た時もグッときたなということを思い出しつつ今回もグッときてしまった。ある程度長い人生時間を内包した映画であるが(最初から最後までなら10年くらいかな)、見せるところと見せないところの分別が完璧に近い映画だと思った。人生の要点だけが展開されていく(だからといってダイジェストに見えないのも手腕)。
自分の人生を客観視することは難しいが、人生の要点とはどこにあるのだろうか。映画化を考えなくても良い。例えば、僕の亡くなった姉に対して、もちろん彼女の晩年は印象に残っていることが多いが、ふと思い出すのはその数年前、高崎の心療内科に連れていって、帰りに彼女が好きなアニメグッズを売っている店に寄り、さっぱりしたものが食べたいとそれほど美味しくはない定食屋で2人で海鮮丼を食べた1日である。会話もぎこちなかったし、それはたわいもない一日であるが、僕にとっては彼女と関係する中での人生の要点である。

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