部屋の中に居るのだが、指がかじかんで、
キーボードを打つ手が、ままならならない。
それほど、冷え込んでいる、今は、夜半。
この寒い時期に、極寒の榛名山を登って行く人たちがある。
公魚を狙う、釣客である。
ここ数年、温暖化の影響によって、榛名湖の結氷が足りず、
群馬の風物詩となっている、湖上公魚釣りが解禁されずにいた。
それが今年、上手い具合に結氷し、待ちに待った、公魚釣りの解禁。
と言う運びになり、大いに賑わっているらしい。
関係者に聞くところによると、その氷の厚さ。
一昔前に比べると、随分と薄い、のだと言う。
私も先輩方から話を聞くと、冬は公魚釣りとスケートで、
湖上を埋め尽くさんばかりの人出だった、と言う。
古い本で読んだのだが、その昔、公魚が肺病、つまり結核に効く。
てぇのが、広く世間に言われていたらしい。
結核が不治の病だった、当時。
冬になると、この榛名湖の公魚を食べて、伊香保で湯治をして体を癒す。
と言う、お客さんで随分と賑わっていたらしい。
もっとも、病人なので、街場の活況とは、少し違うだろうが。
私などむしろ、公魚釣りに出掛け、湖上のテントに一昼夜居たら、
その寒さで、肺を病んでしまうそうである。
そう言う事を、行きつけの床屋のおやっさんに話すと、
「いやぁ、テントん中はねぇ、中々、あったかいもんですよ」
なんて言うが、一向に信用できない。
結氷した榛名湖畔を思い浮かべるだけで、背中に寒気が走る。
だけれども、床屋のおやっさん曰く。
一度、湖上で自分の釣り上げた公魚を、そのまま素揚げにして食べる。
その美味なる味わいを堪能したら、止められない。
のだと言う。
なんて言うが、それも、一向に信用できない。
しかし先程から、一向に、部屋も温まらぬ。
【天候】
終日、快晴なれど、午後からからっ風吹き、とても寒し。