目が覚めた。
とても、うるさくて。
ガリガリと、暗がりでらうるさく振動している物の方へ手を伸ばし、
その震源物を掴んで、ボタンを押す。
寝ぼけ眼で耳へ当てると、落ち着きを取り戻した携帯電話からは、聞き覚えのある声。
いい加減な返事を重ねて会話を終え、一息つく。
しばらくして、ようやく状況が呑み込めた。
今朝。
蓮の花でひとつ俳句でも、と言う句会があった事を思い出した。
「蓮の花」であるから、その咲き始めを見ようとすれば、当然、早朝と言う事になる。
句会の披講者いないので、「是非、来い」と、主催者に言われていたのであった。
早朝なので、気が重たく、参加の返事を伸ばし伸ばしにしていたら、今朝になってしまった。
しかし、いま起きてしまったらのだから、仕様が無い。
句帳と歳時記をポケットに押し込んで、しぶしぶドアを開けて一歩踏み出した。
早朝の道路は、すれ違う車など無く、かつまた、朝の涼しい空気が流れていて、とても心地好い。
窓を全開にして車を駆って行くと、徐々に、脳内も覚醒してきた。
前橋市の外れにある現地へ着いて、参加者一同に挨拶。
用水路と田の畔道を歩き、吟行地である一枚の蓮池へ到着した。
着くと、既に先生は到着していて、蓮池を前に腕を組んで立っていた。
朝の光と、蓮池の華やぎの中、なんだか仏教的な荘厳な印象であった。
それを句にすると怒られそうなので、仏像、いや、先生へ挨拶し、
蓮池の周りを小一時間ばかり吟行した。
蓮池を歩き回っている人間が、どうにも蓮の世界への侵入者の如く見えた。
主催の家へ戻り、朝食後に句会。
今回は、初めて俳句を詠む方や、初めて会う女流俳人の方も二人参加されており、
とても新鮮な句が見られた。
自分自身に於いても、早朝から句作する事など、泊りがけで吟行にでも行かない限り、
日常生活の中では、滅多に無い。
なので、清々しい朝の光の中で、俳句を作る事自体が、ちと新鮮だった。
句の出来はまずまずだったが、蓮池の中で朝の空気が吸えただけでも、
とても満たされた気持ちになった。
朝日に照らされて咲き初む蓮の花は、なんとも清浄な雰囲気を感じさせる、
綺麗な淡い色合いであった。
しぶしぶ家を出て来た気持ちを一転させ、帰る頃には、「吟行は朝に限る」なんて思っていた。
蓮の花が咲いて、浮世の街もどうやら今日の活動を始めた気配。
【天候】
朝より小雨混じりの曇り。
終日、曇りがちで過ごしやすい気候。