1439声 浅草吟行・合同句会

2011年12月10日

列車は東京へ向かっている。
私は今日、浅草で開かれる句会を目指し、上京している。
吟行地である浅草に着く前に、列車内で、過去に訪れた浅草の風景を想像し、
句を作っている。
つまりは、少し「拵えて」行こうと言う算段なのである。

句会に際して、句を拵えて行く事を、私は好まない。
折角、浅草が吟行地であるので、当日の浅草を詠んで、
投句するのが筋であると思う。
その筋を曲げざるを得ないのには、理由がある。
至極単純に、寝坊したので、どんなに急いでも、
浅草到着が投句締め切り間近になってしまう行程なのである。
なので、この車窓の風景が一切目に入れず、
瞼を閉じて思い出の浅草に浸らねばならぬ羽目になってしまった。

上野駅へ到着し、上手い具合にメトロを乗り継げたので、
食事の時間を抜かして、30分ほど浅草を吟行出来た。
師走の浅草、仲見世から浅草寺はほど良い人出具合で、
暦売りの威勢の好い口上が響いていた。
香煙吸われ行く冬の青空の下、人力車夫の句やらおでん屋台の句やら、
浅草らしい句を、嘱目である五句揃えて、急ぎ足で句会場へ向かった。

協会の「東京部会・神奈川部会合同句会」と言うことなので、
群馬からの参加者はどうやら私のみの様子だった。
会場にはおよそ百五十人の参加者がおり、これだけ人数がいると、
選句するのにも骨が折れる。
選句の前に、「立川志の春」さんの落語があり、
実はこれが参加する大きな動機でもあった。
一般披講も、およそ百五十人もいれば、一苦労である。
今回は、全くふるわなかったが、上手い句や面白い句が沢山発見できたので、
満足であった。
選者披講では、おまけ程度に一句だけ入選していた。
志の春さんも選句してから帰られたようで、私の句がひとつ入っていた。

句会が終わり、浅草、上野、とどめに新宿で飲んで、終電で帰って来た。
忘年会が佳境を迎えており、どの店も混んでいたが、私にように立ち呑みだとか、
怪しげな赤提灯だとは、割とすんなり入れた。
終電に乗るべく、千鳥足を進めていると、東口駅前は騒然としていた。
みなが見上げている夜空を仰ぐと、いままさに、月触の最中で月がどんどん欠けていた。
帰りの列車内で、月蝕の句を作ろうとしたが、いつしか寝てしまって、
句帖を握りしめたまま終点だった。

【天候】
終日、冬日和