250声 路地裏に娘 前編

2008年09月06日

先日終日、前橋市内をグルグルと走り回っていた。
目的は銭湯探索。

銭湯残存地域と言うのは大抵旧市街にあたるので、
一方通行の多い、入り組んだ路地の中から探し出さねばならない。
半ば当てずっぽうで、路地を彷徨う。
手拭い片手に、キョロキョロ屋根を見回しながら歩く(煙突を探しているのである)様は、
非常に怪しい。

そんな怪しげな様子で、午後三時の空地まどろむ路地裏を歩いていた私。
フト前方に目をやると、こちらへ近づいてくる一台の黒い日産マーチ。
若干驚きつつ足を止め、手拭いを握る左手に自然と力が入る。
すると、私の真横に着けたマーチの運転席側のパワーウィンドウが、
億劫そうに開いた。
車内の運転席から斜めにこちらへ向く顔。
目が合う。
綺麗にセットされた茶色の巻き髪が似合う、上品そうなお嬢さんではないか。
「ややや」
手拭いをさらに強く握りつぶす私。

《明日へつづく》