2233声 ヒッチハイカー

2014年05月04日

中之条の街角でも、今の時期若者が「高崎」などと書かれたスケッチブックを掲げていて、

おっ!と思うことがある。

そういう事はしたこともないし、乗せたこともないのだが、

勇気があるなぁと思いつつ、決まりきった旅行とは違う楽しさがあるんだろうなぁと思う。

 

もうずいぶん前の話。

隣町へかかる橋の手前で、やや年のいった女性が、信号待ちの車の窓を一台一台叩く。

窓を開けると「隣町の病院まで載せてくれませんか?」と言う。困惑しつつも乗せた。

ある日を境に、ちょうどいい時間帯の路線バスが走らなくなり、車も乗れずあてもないので、

朝行き来する車を止めて乗せてもらっているのだという。色々にくたびれたような女性だった。

「それは大変ですね」と言いつつも、正直「やっかいだな」と思う自分がいる。

 

その後も信号待ちの際に何度か窓を叩いて歩く女性を見たが、

彼女が車に乗る場面を見ることはなかった。

僕は信号機のタイミングで通り過ぎるのがほとんどだったが、

2回ほどタイミングが合い、一度は乗せて、一度は無視した。

 

ほとんどの人は善良であると思う。

朝、ふいに車の窓が叩かれ、ふいに善意が試される。

通り過ぎる人を責めることなどできない。

昨年の冬あたりからか、その女性をまったく見なくなった。

送る車が見つかったのか、違うのか、どうなったのかはわからない。

その場所を通るたび、心がちょっとざわつく。