2402声 「北海道麦酒漬紀行」番外其之二

2015年05月07日

「バックは」
一挙に血の気が引いて行く心地。
部屋のどこを探しても、背負っていたバックパックが無いのである。
ひとまず、ベットに腰かけて缶麦酒を一口すする。
ホテルにチェックインした時点から、記憶を巻き戻して見るが、
酔いの回った記憶はもはや、砂浜の足跡のごとくであった。
残されている思考力を全て動員し、現場を突き止めねばならない。
重要なのはバックを「置いた場所」である。
チェックインする時、駅のトイレに行った時、列車に乗った時。
「列車に」と、来たところで記憶の中の捜査犬が吠える。
この犬も酔っているので定かではないが、乗車した際に、
網棚の上にバックを置いた。
どうやら、あやしいのはその場所である。
すぐさまジーンズに足を通して、札幌駅へ向かった。
駅構内の「忘れもの」窓口にたどり着くまで、
どのくらいの時間を経たのか定かではないが、
窓口の係員が親切な人だったことは、しっかりと覚えている。
結局、「赤色」と言う単純かつ派手な色が幸いしたのか、
バックは誰にも持って行かれず、初めて名前を聞く、
E駅に先ほど保管されたとのこと。
23時を回っていたので、本日中の回収が難しく、
帰りの時間との兼ね合いもあるので、図々しくも郵送をお願いした。
貴重品の類は全て手持ちの小型バックに入れていたので、
無くなっても大事には至らなかったが、
着替えは一個もなくなってしまった。
酔った若者たちのあふれる構内をとぼとぼと帰りつつ、
コンビニへで下着と缶麦酒を買ってホテルへ戻った。
その後、バックより早く帰ってきた持ち主は、この文章を書きつつ、
北海道から赤いバックの帰りを心待ちにしている。