いつも、本庄駅辺りで目を覚ます。
東京に遊んだ際、帰路で乗る高崎線。
家路に身を置く安心感に、胃の腑からジワリと浸透して来る酔いも手伝い、
上野駅を発車して直ぐ寝てしまう。
一応、手持ちの文庫本を開き、栞を抜いて見るのだが、2、3頁と捲らぬ間に、
睡魔と鉢合わせて御用となる。
目を覚まし、軽い頭痛を帯びた頭で、酔眼朦朧状態となりつつも考える。
先程まで、自らの睡眠は如何なる形態だったか。
口元に涎の形跡は無いにしろ、いささか心配である。
斜向かいの席に睡眠中の御仁。
歯医者の患者顔負けに大口を開けつつ、革の手提げ鞄を抱きしめながら寝ている、
鼠色の背広を着たおやっさん。
車両後方、私の座っている席とは反対側になる、右隅の席にも、また一名。
耳にイヤホンをしたまま、大股を広げて、壁にしな垂れかかる、
リクルートスーツのお嬢さん。
人の振り見て我が振り直せ。
とは言うが、寝姿を直せと言うのは難題で、如何ともし難い状況である。
高崎駅に着き、電車は大きな溜息と共に、一斉にドアを開ける。
飛び起きたのは、夢から覚めた、背広とリクルート。
既に眠気が引いた私は、颯爽と夜風を切りつつ、早足でホームを行く。
寝起きの為か、足元がおぼついていないリクルートを、追い越す。
階段前で振り返ると、ホームの彼方、ベンチ横の時刻表を呆然と眺めている、
鼠色の背広が見えた。

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