もう10年経つのか。
群馬県民なら知らない人はいない(ですよね!)映画『眠る男』監督の小栗康平監督は、寡作の人として知られている。『眠る男』から次の『埋もれ木』までが約9年、そして『埋もれ木』から新作『FOUJITA』までが10年なのである。
『FOUJITA』の群馬県内上映を応援している、邑楽町「邑の映画祭」代表でもある加藤さんが、僕が副実行委員長をつとめる「伊参スタジオ映画祭」に挨拶に来てくださった。僕もひといちばい小栗康平監督ファンであると自称しているが、加藤さんの関わり具合はその比ではない。フランスに帰化した画家・藤田嗣治を描いた『FOUJITA』について熱く語っておられた。
前作『埋もれ木』は、やけに落ち着いた女子高生が「物語を作ろうよ」と友人に話し、現実の中にファンタジーが介入してくる、という、実に小栗監督らしい類をみない作品だった。小栗監督が描くファンタジーは、少年が魔法学校で成長する物語でもなく、竹を切ったら姫が出てくる物語でもなく、「日常の延長にあるもの」だった。
印象的なシーンのひとつとして、駅の近くに大きなトラックが停まっている。そのトラックの側面には、大きなクジラの画が描かれている。そこまでなら、実際にあることのように思う。ただその日は雨が降った後のようで、トラックのそばには大きな水たまりができている。その夜の水たまりに映るのだ、クジラが。それをファンタジーと呼ぶか、ただの現実と呼ぶかはその人の感性次第だと思うが、僕はその描き方がとても好きだった。
『FOUJITA』は、東京上映に合わせ、加藤さん等の尽力でユナイテッド・シネマ前橋でも上映されるそうだ。前橋が生んだ小栗康平という才能。ぜひご覧になっていただきたい。

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