夜が明ける前、新聞代配をしていると、
なんだかあの藪、嫌だなぁと思ったりする。
ホラー映画は極力見ない主義だけど、
もののけか人か潜んでいそうな藪がある。
「お前、映画学校入って
これがつまらないって言ったら駄目だよ」
今でも覚えているのだが、調子のいいマサルが
韓国映画『殺人の追憶』を見て「つまらん」
と言った事に対する、平澤の言葉である。
つまりは、この映画には映画を志すものにとって
大事にすべきことが含まれているということだ。
その席にいた僕も同感だった。
ポン・ジュノ監督は韓国のわりと若手監督にも関わらず、
僕ら学校の創始者である今村昌平の気配も感じるような
重喜劇的世界観を作ってしまった。
一見そこらにいそうな男前ではない韓国の演技派、
ソン・ガンホがこの映画でも堂堂たる演技を見せる。
なんだか嫌だなぁという気配について。
映画の最後、彼は道端の変哲もない排水溝を覗く。
その後に見せる彼の表情が、今も焼き付いて離れない。

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