2556声 阿賀に生きる

2015年10月08日

僕の温泉での楽しみのひとつに、
農作業帰りであろうおじさんたちの
湯船での会話に聞き耳を立てる。
という悪趣味なものがある。

 

「猿のやろうは人を見てるよ。
俺がいればさーっと消えるが
おっかあだと逃げねえんさ」

 

吾妻に住んでいればごく自然に交わされる
そんな会話を、生活に根差したいい言葉だ!
と思ってしまうのは、学生時代に
ドキュメンタリーを専攻した名残かと思う。

 

2年に一度の「山形国際ドキュメンタリー映画祭」
が近づいている。世界各国から有名無名の
ドキュメンタリーのみを集め1週間に渡り開催する、
僕が「日本で一番意義深い」と思う映画祭だ。
2003年にはこの映画祭のスタッフとして山形にも行った。

 

『阿賀に生きる』は、新潟県阿賀野川の農村に、
故・佐藤真監督率いるスタッフが3年にもわたり
そこに生活し、「農村そのもの」を映した作品。
共に生活する中でキャメラに対する違和感も和らぎ、
映るおじいちゃんおばあちゃんは生きた会話を始める。
それを撮ることがいかに難しいかは、やってみるとわかる。

 

国内外、過去から現在に至るまでのドキュメンタリーの
研究家としても知られていた佐藤真監督は、
「ドキュメンタリー映画とは、世界のあり方を批判的に
受けとめようとした映像作品」であると書いた。

 

ぼくらは、現実を、世界を、受け止めているだろうか。