2560声 グラン・ブルー

2015年10月12日

「スカイランニング」という競技をご存じだろうか。
標高2,000mを越える山の急斜面を、駆けるように
登り、下る。聞いただけで心臓が痛くなるレースだ。

 

その競技で日本で最も速い男は、群馬県嬬恋村出身。
競技者としてだけではなく、スカイランニングの普及にも
尽力する32歳。名は松本大という。

 

彼がプロデュースする「アサマ2000スカイレース」の
大会映像を撮影する機会があり、
自称スポーツ無縁の僕ではあるが、彼と親しくなった。
この日は、万座の毛無峠にて彼が山を駆ける映像を撮影した。
撮影で向こうも1000%手を抜いてくれているとわかっても
ついて行くだけでゼーゼーハーハーである。

 

極限の自然環境の中で、ただただ自分と戦い先を目指す。
松本選手の見ている世界を想像した時に、
深い深海へ素潜りでひたすら降りていくジャック・マイヨール、
つまりは映画『グラン・ブルー』を思い出した。

 

印象的なシーンがある。
主人公がベットで眠っている。
突然、迫ってくるのだ、海が、天井から。
そこまで精神的に追い詰められて始めて、
彼は彼にしか見られない別次元の世界まで
降りていくことができるのかもしれない、と思った。

 

松本選手は、レース中でなければ気のいい
山好きなあんちゃんである。ただ僕はレースでの本気の彼を
映像以外に見たことがないので、彼もきっと僕らには
見ることのできない別次元の扉を叩いているのだと思う。

 

自称スポーツ無縁の僕ではあるが、夜明けの太陽に照らされ、
熊笹に覆われた雄大な山が渋く光輝く様子には言葉を失った。

 

山はいいなと思った。