台風が去り、やっと、夏らしい気候が戻って来た。
しかし、こう暑いと、おしぼりで額の汗を拭いながら飲むビールが、
当然ながら美味い。
だから、酒量が増えていけない。
近頃、どうも生き急ぐ様な飲み方をしてしまう。
と言っても、酔っ払いの模糊たる感覚なので、其処まで切迫した状況でも無いのだが、
自然と飲むペースが速くなる。
生麦酒を1、2杯飲むと、もう焼酎やらウイスキーやら何やら、重量級の酒へ手が伸び、
決まって痛飲し、二日酔いになる。
それまでは、じっくりと麦酒を飲み、かつ肴をつまみつつ、
ゆっくりと焼酎方面へ移行して行った。
そう言う飲み方は、心地良く酔いが回り、酒の抜けも良い。
一頻り飲んで家路につく。
最終的に、田圃の用水路脇で独りうずくまり、涙目になっている事態が、
この夏、度重なっている。
広大な田圃の闇夜に鳴く、数万匹の蛙。
なんだか全員から罵倒を浴びせられている様な、心持になる。
「うるせってんだ」
などと、此方も酔いどれて反撃する。
「オーン」
すると、何処からともなく牛蛙。
落ち着き払った低音の声で、世にも些細な紛争を制す。
「オーン」
ふらふらと、電燈の下まで行って、振り返る。
「オーン」
電燈の灯、滲んで見える。
「オーン」
「るせってんだ、まったく」
「オーン」
苦笑いで、和睦。