2704声 百円の恋

2016年03月04日

僕はもう長いこと中之条町の「伊参スタジオ映画祭」のスタッフをしている。近年は上映後の対談司会も務めるようになった。

 

昨年の映画祭では、玉村出身の大崎章監督『お盆の弟』を上映した。これは、群馬に住む売れない監督と脚本家の冴えない日々を描いたもので、上映後の対談には大崎監督と、この作品の脚本家である足立紳さんをゲストに招いた。勘の良い方ならすぐにわかると思うが、この「売れない監督と脚本家」という設定は、大崎監督と足立さんの実人生がフルに活かされているのだという。

 

「映画なんかに夢見ないで、自分の人生を生きなさいよ」みたいなセリフで、主人公が奥さんから罵られるシーンがある。会場には明日を夢見る若手監督たちもいるので、彼らにとってもまさに刀で切られるくらいに痛いシーンだ。そして奥さんから三くだり半を突きつけられるシーンは、脚本の足立さんの本当の話なのだという。一見すれば悲惨でしかない現実を、素晴らしい映画に昇華させたお二人には、スタンディングオベーションを送りたい。

 

・・・などと思っていたら3月4日の今日、その脚本家・足立紳さんは、安藤サクラさん主演の『百円の恋』により、日本アカデミー賞最優秀脚本賞を獲ってしまった。脚本界におけるシンデレラストーリー?いやいや、長年にわたる苦渋の成果だと思う。そんな足立さんは最近、小説家デビューも果たした。題名は「乳房に蚊」。働き者の恐妻と、自意識だけが高い無職の夫の話らしい。・・・素晴らしいではないか。