605声 夢中時間

2009年08月27日

今日が始業式だったのか、正午前頃、沿道を行く小学生の下校班を見た。
青や赤、黒や桃色、皆それぞれにカラフルなランドセルを背負っている。
夏休みが終わった寂しさか、はたまた、体育館での始業式にバテたのか、
いささか元気が無い様に見えた。
先日、運転中に聞いていたラジオには、夏休みの恒例の特別企画である、
「子ども電話相談室」がかかっていた。
その中、小学一年生の男の子の質問が、特に印象に残っている。
それは、「楽しい時は時間が進むのが早くて、楽しくない時は時間が進むのが遅いのは、
どうしてですか」と言うもの。
とても子供らしい、無垢な質問である。
回答者の先生は、職業柄、脳の神経回路の事を小難しく引用して回答していた。
回答を聞いた子は、何だか腑に落ちていない様子で電話を切った。
この子は、遊んでいる時は時間が早く、授業中は時間が遅く流れている、
と感じるらしい。
大人になったって、誰しもがそうである。
大人が嘆く。
「歳をとると、一年が短い」
そう感じるのは、案外、時間を忘れて夢中になれる様な、
楽しい事が多いからなのかもしれない。
翻って考えると、毎晩、この「鶴のひとこえ」の一行目を書き出すまでの時間が、
途方も無く長く感じる。
そして、書き進めて行けば、どんどん思考の迷路へ迷い込む。
この迷路から、どうにかこうにか出て来て、つまり文章に最後の句読点を打って、時計に目をやる。
すると、時計の針が駆け足で回ったかの如く、すっかり夜更けになっている。
迷路を這いずり回っている時間は、決して楽しいものでは無い。
楽しいものではないが、出口を探す事に必死であり、まぁ、夢中になっていると言える。