609声 渋川発の終列車

2009年08月31日

昨夜、上越線の渋川駅から、終列車に転がり込んだ。
渋川駅から高崎方面の終列車は、日曜日と言う事もあってか、
21時48分と未だ夜も浅い時間に出る。
車内のBOX席に腰掛けたのは、それぞれ、世代も職業も違う酔っ払い3人。
共通しているのは、男やもめと言う事。
紙コップ片手に、低級酒で心地良く酔う。
品の無い声が、静まり返った車内に響く。
隣側の席には、疎らに学生風の男女などが、皆一様に、携帯電話を眺めている。
酒入れば舌出ずで、周りに迷惑だろうと状況を把握しつつも、それを制止する機能が、
酒毒によって著しく低下している。
3人とも、列車が踏む線路の継ぎ目の音さえ、天女の手拍子に聞こえて来る様な、
心持ちであった。
3人の中で、私が一番先に降りる。
心の隅で車内非礼を詫びつつ、ホームへ歩み出して、列車が去る。
駅から路線橋へ出ると、外は小雨。
路線橋の上から、終列車の灯りを確認しようとしたが、
夜霧に霞んだ街に灯が在るのみ。
濡れた手すりに寄り添いながら、覚束無い足取りで階段を降る。
降りた先の駐輪場、自転車の先、猫の目が二つ、小さく灯っていた。