先日、昼飯時の軽食堂でメニューを選んでいた。
その際、ふと、そろそろ夏も終わりだと思った。
だとすれば「これで食い納め」と思い、冷やし中華を注文した。
出てきた冷やし中華の隅には、ちょこんと、鮮やかな蜜柑の粒が3個、添えてあった。
その色、形から、缶詰の蜜柑だと思い、食べて確信。
非常に、懐かしい風味が、思い出を回想させた。
高校を卒業し、実家を出て他県で独り暮らしをしていた時分、まず食が困った。
「これからは自炊だ」
って言ったって、それまで料理などした事も無い。
米だって満足に炊けない始末で、おかずを作るなんて、毛頭考えられない。
そこで重宝したのが、缶詰である。
これはもう、料理もへったくれも無い。
「ベコ」っと蓋を開ければ、中には、絶妙な味付けの鯖の味噌煮やら、
焼き鳥やらが入っている。
食べ終わったら、缶を捨てれば良いだけで、後片付けも簡単。
この文明の利器は素晴らしい。
おまけに安い。
と来れば、買わない手は無い。
現代人である事に感謝しつつ、来る日も来る日も、大量に購入してある缶詰を食べ続けた。
しかし、この順風満帆な缶詰生活に、或る日、一抹の不安が去来した。
それは、「あまりにも栄養バランスが悪いのではないか」と言うもの。
逆説的に言えば、栄養の、しかもバランスの事を注意を回せる様な余裕が、
生活に出てきたと言う事。
つまりは、余裕ある不安なのである。
これは直ぐに解決した。
その解決方法は、蜜柑の缶詰を食べる事。
やはりこの時期、私は一種の缶詰中毒になっていたようである。
蜜柑には「ビタミン」が含まれている。
その類の栄養素を漠然と摂取していれば、まず健康に問題は無いだろうと言ういう、
浅はか極まりない解決法である。
次日、買い出しに行った際、おかずの缶詰の他に、蜜柑の缶詰を大量に購入し、
意気揚々と帰って来た。
明日へ続く。