614声 土俵際

2009年09月05日

以前にも書いたが、秋の読書熱に冒され、中毒患者の様相を呈している。
よって、睡眠時間は減り、読了した本は増える一方。
睡眠時間が減るのは、生活上の支障が少なくない。
では、読書を止めて、早寝をすれば良いだけの話なのだが、そこは中毒。
どうしても止むに止まれず、寝床の中で読んでしまう。
そこで、一計を案じて、最近実行している方法がある。
それは、睡眠を誘う様な本を読むと言うもの。
つまり大袈裟に言えば、「毒を以て毒を制す」と言う事になる。
しかしながら、内容が眠たくなる様な、数学書や六法全書なんて本は、
出来るだけ読みたくない。
其処は、内容で無く、体裁に焦点を当てる。
毎日、寝床で読む本は、決まって文庫本を読む。
それは、軽い文庫本なら腕に負担が掛らず、活字も大きくて、読み易いから。
それを、重くて活字の小さい、しかも古くて旧仮名遣いの、
箱入りの文学全集なんてのに変えるのだ。
すると、内容は面白いのだが、1巻が厚く、重たい、上製本の全集の為、
直ぐに腕が疲れ、旧仮名遣いの難読も相まって、睡魔の侵攻に勢いが出る。
それまでは、睡眠欲と読書欲が、寝床の土俵でがっぷり四つに組んで、
「のこったのこった」をしていたのだが、
重量級の全集が登場してからは、組み合うまでも無く、あっさりとはたき落とされる。
土俵の上で力尽き、崩れ落ちる読書欲。
かくして私は、本を手にしたまま、眠ってしまう。