656声 街は人 後編

2009年10月17日

昨日の続き。
例えば、「谷根千」なんてどうだろうか。
谷根千ってのは、東京の谷中、根津、千駄木の愛称で、
同名の地域雑誌も今年の8月まで発売されていた。
この地域は、東京23区では下町に該当する、謂わば都内の地方である。
にもかかわらず、不動の人気を誇っている地域なのだ。
休日や祝祭日、つまりは観光日和。
JR日暮里駅を出て、谷中銀座商店街まで来ると、肩がぶつかる程の人波。
その多くは、首からカメラをぶら下げた、国籍も様々な観光客。
しかしその活気を作っているのは、観光客たちでなく、商店の人たちなのである。
安価な料金で、昔ながらの揚げ物を店頭販売する店。
香ばしい匂いに釣られ、往来には直ぐに列ができる。
店頭にサーバーを置いて、その場で生ビールを売っている店。
店の前に出してある椅子に腰かけ、はたまた路上に立って、ビールを飲む人だかり。
店の人、誰もが活き活きしており、それが商店街に活力を生んでいる。
商店街を過ぎ、街中へ入ると、民家を再利用した洒落た商店が点在しており、
若き芸術家たちが集う場所となっている。
勿論、銭湯、古本屋、食堂、団子茶屋、飲み屋なども残っており、
市井生活との共存が伺える。
私も、ふとこの谷根千を歩きたく思い、出掛けた時はやはり、
人に会いに行く様な心持で出掛けた記憶がある。
特に誰と言う知り合いはいないのだが、街に生きる、街を活かす人がある。
それは、商店のおばちゃんだったり、食堂のおやじだったり、銭湯の番台だったり、様々。
街を歩きたくなる衝動は、人に会いたくなる衝動。
とも、私の場合は、言える。