3614声 月の石畳

2016年10月02日

今日は千葉の成田山で句会であった。
準備から金勘定まで役目があったので、
一日は目まぐるしく過ぎた。
なおかつ、参道の各店舗は午後四時には店じまいなので、
殊更、一日が短く感じた。
成田山の人出はまずますといったところであった。
紅葉の色づく今月下旬は、まずまずどころの騒ぎでなく、
芋洗い状態であろう。

どうも、人出のある参道や境内で句を作るのが好きになれないので、
脇道、細道へと逸れ、池の鯉やら蜻蛉やらを眺めて句作した。
帰り道に金木犀の香りに出会い、
やはり人の中を避けてよかったと感じた。
前に居た車椅子のおばあさんは、押している息子らしき人に声をかけ、
しばらく金木犀の香りと木洩れ日とを楽しんでいた。

参道の老舗大野屋旅館で宴席となり、何百年もこうやって俳人たちは、
句会と酒を楽しんできたのだな、と瓶麦酒を片手にしみじみと実感した。
酔眼をこすりつつ会計を済ませ、参道に出てみれば、
閑散とした午後六時、月の石畳が広がるばかりであった。