3616声 全部忘れて

2016年10月04日

十月というのに、まだ台風が来ているという。
先月は出張続きで、西の各方面へ滞在していた。
九月の旅は、台風とは切っても切れぬ縁なので、
飛行機の時間では苦労した。
台風の最中、徳島の山間で見たのはお遍路さんだった。
雨上がりの夕景、木洩れ日の中を行くあの白装束は、
神々しい力を纏っているように感じた。
ところ変わって大阪の大衆酒場では、
神々しさとはまったく無縁だが、
力みなぎるおっちゃんたちが大勢居た。
カウンターの中、どて煮がぐつぐつ煮えている大釜の横が、
店主の定位置なのであろう。
常連さんは、その定位置を囲むようにカウンターに座り、
店主との丁々発止を愉しんでいる。
そのやりとり、特に店主の歯切れの良い関西弁が耳にのこっている。
「○○さんあんた、酒飲みやろ」
「酒飲みやったらな、ようけこれ(酒)飲んで」
「飲んでな、それで全部忘れるんや」
「ぜーんぶ忘れて、あんた、明日もここへ座るんや」
「そんでまた飲むねん」