3617声 句の匂い

2016年10月05日

これを書いている現在時刻は、午後十一時を回ったところである。
日本海側を通過している台風の影響で、外は強い風が吹いている。
家の前の桜並木の騒ぐ音、それにもまして、雨戸のガタつく音が、
耳につく。
古い家なので建付けが悪く、風が吹くと家中の雨戸が騒ぐ。
そんな夜更けであるが、午後八時ごろ、強風の中に一件、
書類が配達されてきた。
差出人は遠方の印刷会社であった。
封を開けると、中身は一冊の句集。
今月十五日の発売を前に、出来上がったばかりの一冊が、
著者に見本として来たという訳であった。
ぱらぱらと頁をめくっただけで、とりあえず机の上に置いてある。
木立の葉音やら、雨戸やらが騒ぐので、何だか手に付かない。
頁を開いて匂いを嗅いでみる。
良い匂いだ。