665声 彼は誰時の深呼吸

2009年10月26日

今日は終日雨。
まとまった雨が降るのは久しぶりだ。
月曜日の朝からの雨降りは、非常に気が滅入る心持になる。
今朝、窓の外から何やら人の話声らしき物音が聞こえ、目を覚ました。
屋根を打つ雨音が、寝床から窓へ這って行く気力を削いでしまったので、確認する気も起らない。
完全に覚醒せぬまま、寝床で寝返りを打ちながら、夢現でその声を聞いていると、
声の主はどうやら独りの様である。
「はい、はい、えっとじゃあ3部届けとけばいーんですね、はい」
エンジンのアイドリング音と共に聞こえるので、おそらく、新聞配達のおやっさんが、
玄関先に停車し、携帯電話で通話していると見て間違いないだろう。
それにしても大きな話し声である。
話し声が途絶え、「ガチャン」とギアを変速する音と共に、エンジン音が遠ざかって行った。
夜が明け切らぬ部屋は未だ暗く、時計の目視ができない。
朦朧としていた意識が徐々に覚醒してきたので、寝床から這い出て、窓を目指した。
カーテンの裾から手を入れて窓を開け、頭だけ出して外の空気を吸う。
彼は誰時の町は雨降り。
吸い込んだ空気を吐くと、呼気が白くなった。