私は夢を見ない人間だ。
と言うのは、別にリアリストである事の比喩では無く、
寝ている時に夢を見ないのである。
一年の間で全く見ない訳ではないのだが、人に話を聞くと、
私の場合は夢を観る回数が極端に少ないらしい。
見ているのだけど、朝起きて覚えていないのか。
それも、同じ事である。
夢を見ないのに、寝言は人一倍言っているらしい。
この「らしい」と言うのも、当然、私の場合は夢と寝言が連動していないので、
意味不明な寝言のみを言っている事になる。
女性と寝ている時に、別の女性の名を呼んでしまった。
など、少しは色っぽいエピソードが欲しいのだが、現実はそうもうまくいかない。
大抵は朝起きて、私の寝言の当事者かつ被害者に、「うなされてた」と言われる。
別にうなされている実感も、原因も見当たらないのだが、
兎も角、夜毎様々なうなされ方をしている。
実家では良く親に、「寝ながら謝ってた」と言われた事がある。
「すみません、あー、すみません」
と謝罪しているらしい。
外で寝る時に多いのが、断末魔の叫び系統の声である。
「あぁ〜うぅ〜ぐぅぁ〜」
針の筵に寝ているかの如く、呻いているらしい。
さて、原因は何だろな。
と考えるに、枕が合わない、ストレス、呪い。
等々挙げられるが、私自身、一番有力な線が、遺伝ではなかろうかと考えている。
私の親父が、これまた寝言を良く言うのである。
寝言だけでなく、寝ぞうも恐ろしく悪い。
例えば、深夜に「うぅ〜」と呻きながら、足をバタバタやっている。
エクソシスト状態なのだ。
寝ぞうも良く寝言を言わない母と、寝ぞうが悪く寝言を言う父。
足して二で割って、私には寝言が残った。
それでも、寝ぞうが悪いよりはマシだと思っている。