3662声 話すときりがない

2016年11月18日

第16回伊参スタジオ映画祭初日。今年は3日間の開催で、この初日のみ山の伊参スタジオから町へ下り、町中のツインプラザにて上映が行われた。歴代シナリオ大賞監督の新作短編もいい作品揃いだったが、なんといっても小栗康平監督を招いての『眠る男』『FOUJITA』の連続上映は伊参ならではだった。

 

難しい映画だから、と言われる事のある小栗作品。確かに宮本輝原作の処女作『泥の川』以外は全て、ドラマ的な映画とは一線を置く詩的な作品が多い。でも、少なくとも群馬県人であれば『眠る男』は3回は観て、それからものを言った方が良い。観れば観るほど、自分の背景で静かに流れ続けるような、そんな稀有な力を持つ作品だと思う。

 

映画祭3日目で上映する『ひかりのたび』という、僕が激烈お勧めしたい映画を撮った澤田サンダー監督は初日から来ていて、この『眠る男』は初観賞だったそうだが、「主人公が眠り続けて動かないことによって、より周りの人物や景色に注目が注がれる仕掛けですね」と言っていてなるほどと思った。『眠る男』を観て、一般的なドラマのように主人公の目線や心情で物語を追えない我々は、その映画の世界に形を与えられないまま放り込まれるのだ。それは言い方を変えれば魂の散歩なのだ・・・とか、話し出すときりがない。

 

小栗監督は、講演の中で『FOUJITA』でのCG効果について、メイキング映像付きの解説もしてくれた。早朝の霧霞む田んぼ、水面は太陽に照らされ鏡のように光を反射し、その畦を主人公である藤田嗣治が歩いていく。そんな抒情的なシーンも、人物は別撮影、背景も合成し色を変えるなど、徹底した絵作りが行われていた。そうか、小栗監督の徹底したイマジネーションは、CGによって(SF映画とは別の使い方で)補完されたのだと思った。本人は群馬の山中で畑も耕して暮らしているらしいですけどね、孤高の作家ですね・・・とか、話すときりがない。

 

映画祭は、まだまだ続く。